弦楽器のみの説明に、私は思わず口を開く。

「それくらい知ってますよ!?」
「それは失礼」
「流行りの音楽は知りませんけど、昭和歌謡とか演歌なら知ってます」
「寧ろなんで」
「お祖母ちゃんだけなんで」

そう言うと、ヤマダさんが小さく頷いた。

なんとなく二人で歩き出す。

「なるほど」
「あ、音楽好きな人が、です」
「そういう意味か。寧子ちゃんは東京行きたいの?」

尋ねられて、そろりと視線を逸らした。沈黙は肯定になりそうで、言葉を探す。

いつの間にか太陽は海の向こうへ完全に沈んでいて、群青が空を覆う。