東京は色んな店があって、とか。 有名人がそこらへんを歩いてて、とか。 親戚の従兄弟たちの話の方が思い出せた。 「こことそんなに変わらないと……あ、でも」 ヤマダさんが立ち止まり、ビルの看板を見上げた。視線の先が気になり、辿ればカラオケの文字。 「こんなに綺麗に夕焼けが見える場所は少ないな。ビルが多すぎて」 西の空を指した。 赤く焼けるような太陽が海の向こうに沈んでいく。 「そんなにいっぱい、何のビルがあるの?」 「……さあ?」 私の、神社のご利益と同じ返答だ。