一頻り笑った後、姿勢を正す。 「塚田(つかだ)寧子(ねいこ)です」 「塚田さん」 「私の名前聞いて名字呼びする人、初めてです」 「じゃあ寧子ちゃん」 「ヤマダさん、あそこが神社です」 「タロウって呼んでよ」 「面倒くさいな」 「ねーいーこーちゃーん」 「うるさいな」 ケラケラ笑う自称ヤマダタロウさんを連れて神社の鳥居の前まで来た。 流石に自転車をひいて鳥居はくぐれないので、そこへ立ち尽くしていると、先を行ったヤマダさんが振り向く。 「寧子ちゃん、一緒に行こうよ」 冬の空気が、似合う人だ。