瞳の中で好きって言って

"ガチャ…"

ドアが開き、杉崎君が部屋へと入ってくる。
「ただいま」
ソファに座っていた私の姿を見つけ、いつものように言う。
あぁ、もうこの「ただいま」を聞くのも最後なのか…。
急に寂しさがこみ上げる。

私は立ち上がり、杉崎君の方を向いた。
「おかえり!」
いつものように視線をそらして立っている杉崎君に、とびきりの笑顔で答える。
「……?」
いつもと違う様子に気が付いたのか、杉崎君は不思議そうな顔をした。
そう。今の私は中学のジャージ姿。
いつも着ていたもこもこのルームウェアではない。
顔は見なくても、下ろしている髪は視界に入るだろう。
髪も、いつものツヤツヤストレートではない。元々のくせっ毛のまま。
「梨菜……?」
杉崎君は驚いた拍子につい顔を上げてしまったのか、私と目が合った。
「えっ…」
杉崎君の目に映るのは、いつもとは全く違う、素顔の私だった。