小鳥たちの庭園

 ティディベアなんてこの家に来て初めて見た。ベッドの上に鎮座するリボンをつけた熊を見ながら微笑む。

「ありがとう! お気に入りなの」
 ふふっ、と柔らかく笑う梨帆はまるで天使。最高に可愛い。きっと、少女漫画のヒロインがいたらこんな感じなのだろう。ちらりと本棚を見やれば、以前好きだと言っていた作家の小説がずらりと並んでいる。

「それで、早速千颯くんのことなんだけど」
 そう切り出されて、視線を梨帆に戻す。持ってきたペットボトルの炭酸水に口をつける。

「そうそう。あれから竜久に聞いたんだけどさ」
 兄である千冬に聞いたとは言えず、竜久から聞いた体で梨帆に千冬から聞いた情報を大方伝える。父親の死から兄が優遇されてきたこと、母親が若年性アルツハイマーであること。
 梨帆は黙って聞いていたが、話の終わりに一つ息を吐き出すと膝の上のクッションをぎゅっと抱きしめた。
「彩ちゃん、すごい……ほとんどあってる」
 どうやら一番驚いた点は彩の考察力だったらしい。てっきりこういう時、可哀そうとかいうのかと思ったけれど違うようだ。確かに、彩の考察はほぼ当たっていてすごいけれど。
「まあ、これが分かったからといって何ができるわけでもないけどね」
 話を戻すように梨帆を見つめ、ため息をつけば、梨帆がウーンと考え込む。
 よその家庭に過干渉していいことなどないのだ。そもそも父親が亡くなってから時間がそれなりに経っている。にもかかわらず、季節によって思い出された気持ちのぶつけ先を年上のお姉さんに向けている人になんて声をかけろと言うのだ。