小鳥たちの庭園

 貸切の誰もいない時間にマシンの音と声だけが響く。

「母は相当取り乱したんだよね。そりゃもうどうしようもないくらい」
 母親、と言う単語に以前彩たちと話した内容を思い出した。

「父が死んだのを受け入れられなくて、数週間は落ち込むばかりだったんだけど、ある時急に元気になった。それが、突然すぎて僕にはちょっと不気味に見えた」

 首筋から汗が流れ始める。マシン脇に置いていたタオルで汗を拭いながら隣の声に耳を傾ける。

「露骨だったのは、僕にばかり構うことだった。あからさまに態度は違ったね。見えてないまでは行かなくても、誰が見ても僕が優遇されて、あの子が不遇な扱いを受けてた」

 見てほしい、またあの女子会の時に聞いた言葉が頭に浮かぶ。彩ってば、そういう考察のプロなのではないだろうか。あまりに的確すぎる答えに感心する。

「なんで僕だったか。母の口癖は、『お前はパパに似ていい子ね』だったね。確かに顔はどちらかといえば僕が父似で、あの子が母似だけどさ。それだけだよ。でもそれだけが僕らの待遇の分かれ目になった」
 母親に優遇された兄と、不遇な扱いを受けた弟。その2人が不仲というのだから、2人の中でもなんとも言えない空気が流れていたに違いない。

「中学に入って、あの子は勉強も頑張ってたし、スポーツにも一生懸命で。知ってる? あの子はめっちゃくちゃバスケ上手いんだから」
「今度見に行こうと思って。動画撮ってきてあげるよ」
「それは助かる。僕は行けないからなぁ」