小鳥たちの庭園

 うち、それなんだよね、と愚痴をこぼした彩の父親攻撃は止まることを知らない。相当苦労しているのだろう。百合がストップをかけるまで悪態をついた彩は「失礼しちゃった」と空気を変えるように珈琲を飲んだ。

「でもさ、高校生がママママって追いかける? どうしようもないマザコンとかじゃなきゃ反抗期とかじゃないの?」
 特に千颯なんてマザコンには到底見えない。かと言って反抗期の息子みたいに八つ当たりぶちかますような人間に見えないけど。

「そりゃそうかもしれないけど。なんて言うんだろ、自分を見てって気持ちは見られなかったから思うわけでしょ? 私はお母さんには愛されたからわかんないけど、そうじゃなかったら今も見てほしいってどこかで思ってたっておかしくはないんじゃない?」
 くるくる。ティースプーンで珈琲を混ぜながら、彩が言う。梨帆が「見てほしい……」と呟いていて、おそらく千颯に該当するのか考えているのだろう。
 なんで兄と不仲なのか。おそらくここがポイントになってくるのだろう。というかそもそもそれがわかって何かしたとして千颯が納得するとは思えないけど。

「決めつけはよくないけど、そういう頑固な人って強引さでぶち破った方がいい時ないかしら?」
「百合って肉体言語大好きだよね」
「何、味わいたいって?」
「いや、何も。あー空手黒帯すごいなぁ、尊敬しちゃうな」
「見事な棒読みだね、茉子ちゃん」