小鳥たちの庭園

 間に挟まれた梨帆が生まれたての子鹿のようにプルプルしながら困っている。ごめんねりほりほ、困らせたいわけじゃないの。心の中で謝っておいた。

「そんなやっすいコンシーラーじゃくま隠せてないし、授業中も寝てまで女の子に寂しさを一瞬だけでも埋めてもらいたいわけ?」
「アセルのコンシーラーを馬鹿にしないでくれる?」
「くま隠してんじゃん」
 千颯が心底うざいと言う顔をして半ばヤケクソにため息をつく。その雑さに梨帆の肩がびくりと揺れる。

「まこち、今日ご飯いらない。ごめんね」
 そう言ってソファから立ち上がると、スマホを片手に玄関を出て行く。声を張り上げたり、やけくそにじゃあ出て行くからなんて言わなかったのは千颯の精一杯の譲歩だったのだろう。結局説教っぽくなってしまった。

「茉子ちゃん、その、ごめんね、私がもっと」
 申し訳なさそうに肩を落とす梨帆に首を横に振る。
「りほりほは上出来だよ。今回は私が圧倒的に悪いから。千颯が出て行ったのもあいつなりの譲歩だし。気にしないで」

 そう言って、梨帆の頭を撫でキッチンに戻る。用意していた皿を一枚抜く。さあ、どうしたものか。このままじゃいつか本当にしれっとこの家から出ていきそうだし、今日だって帰ってくるのかわからない。
 釜をかけるつもりで言ったくまも、授業中に寝ているのもそれなりに本当のようだし、今がいい状態には思えない。

「人間って難しすぎる」
 吐き出しそうになったため息を吸い込んで幸せを閉じ込めた。

***

「じゃあ、またね」