小鳥たちの庭園

 スマホを触っていた千颯がローテーブルにそれを伏せ、梨帆を見つめた。負けるなりほりほ。思いすぎたのか人参がすごい角度で切れた。しまった、まぁいいか。

「えっと、その、最近夜遅いからどうしてるのかな、って。すこし、寂しいな〜みたいな……」
 トラップカード発動「寂しい」。事前に梨帆に仕込んでおいたものである。問い詰めているようでは説教臭くなるため、ここは思っていなくても言うべきだと断腸の思いで梨帆に助言したのだった。嘘であったとしても千颯を喜ばせるのは心苦しいが、耐えてほしい。

「えっ、ほんとに? そんな風に思ってくれるなんて、りほちゃん可愛すぎ〜。じゃあ今度デート行こうよ」
 調子に乗んな、千颯! 千切りのつもりが微塵切りになった玉ねぎをボールに移しながらリスニングに集中する。

「あ、えっと、でも、他の女の人、あ、彼女さんがいるんじゃ……」
 梨帆の言葉に顔色変えることなく千颯はゆるりと笑う。

「彼女はいないよ。他の子は仲良くしてるだけ。ね、いつ空いてる? 俺はね〜」

 再びスマホを手にカレンダーを確認し始めた千颯に梨帆があわあわし始める。完全に向こうのペースに乗せられている。ついにこの日は? この日は? と具体的な日付を言い始めた千颯に梨帆を大きく息を吸い込んだかと思うと、「女の人が好きなんですか!」と勢いよく口を開いた。
 千颯はポカンと一瞬間を開けて驚いたかと思うと、腹を押さえて楽しそうに笑い始める。ついでに自分も唇を噛んで笑うのを堪える。