ぎゅっとキャリーケースの取っ手を握りしめ、ようやくインターフォンを押した。
**
それは、ある日突然やってきた。
「たいちゃーん!!!! 今日も愛してるよー!!」
「うるせぇ白瀬。おい保護者、こいつを止めろ」
「ごめんな、相川。俺手一杯なんだ」
いつも通り騒がしいリビングで過ごす昼下がり。茉子の愛の言葉に大雅が煩わしそうに舌打ちし、凛太郎に始末を頼む次第。全く持っていつも通りの午後だった。
そんな中、まだまだ続きそうな言い合いに終止符を打ったのは一つのチャイム音。
「千颯ぁ、鳴ってるよ」
ソファでくつろぎながら珈琲を飲む千颯に視線をやることなく、親指でくいくいと玄関を指せば、「えー俺?」と何とも嫌そうな声が聞こえた。
「まこちのほうが玄関に近いじゃん」
「そうだけど、今人に会える顔してないんだよね」
「そんじゃ外にいる客をアンタは来世まで待たせるんだ」
「言うねぇ春ちゃん。残念なことになんも言い返せねぇよ」
優雅に紅茶を飲む春にそういえば、その絶対零度の視線を向けられる。まさにクールビューティー。
「うるっさい、はるちゃんって呼ばないでよ」
心底迷惑だと眉を寄せる春から次に仕方なしに凜太郎に視線をやる。
「いやいや、そんなに見られたって俺も行かないからな? 多分この間竜久さんが言ってた子だろ?」
竜久、先日。頭の中で二つのワードがぽこんと現れ、手を打った。
「あーそうだわ。私が出たほうがいいね。みんなも静かにしててね。この間話した子が多分来てるから」
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それは、ある日突然やってきた。
「たいちゃーん!!!! 今日も愛してるよー!!」
「うるせぇ白瀬。おい保護者、こいつを止めろ」
「ごめんな、相川。俺手一杯なんだ」
いつも通り騒がしいリビングで過ごす昼下がり。茉子の愛の言葉に大雅が煩わしそうに舌打ちし、凛太郎に始末を頼む次第。全く持っていつも通りの午後だった。
そんな中、まだまだ続きそうな言い合いに終止符を打ったのは一つのチャイム音。
「千颯ぁ、鳴ってるよ」
ソファでくつろぎながら珈琲を飲む千颯に視線をやることなく、親指でくいくいと玄関を指せば、「えー俺?」と何とも嫌そうな声が聞こえた。
「まこちのほうが玄関に近いじゃん」
「そうだけど、今人に会える顔してないんだよね」
「そんじゃ外にいる客をアンタは来世まで待たせるんだ」
「言うねぇ春ちゃん。残念なことになんも言い返せねぇよ」
優雅に紅茶を飲む春にそういえば、その絶対零度の視線を向けられる。まさにクールビューティー。
「うるっさい、はるちゃんって呼ばないでよ」
心底迷惑だと眉を寄せる春から次に仕方なしに凜太郎に視線をやる。
「いやいや、そんなに見られたって俺も行かないからな? 多分この間竜久さんが言ってた子だろ?」
竜久、先日。頭の中で二つのワードがぽこんと現れ、手を打った。
「あーそうだわ。私が出たほうがいいね。みんなも静かにしててね。この間話した子が多分来てるから」

