小鳥たちの庭園

 冷凍してる鮭とか溶かしてたら凛太郎ママが怒るから。と付け足すとコクコクと頷いている。どうやら、凛太郎ママの権力の大きさを1週間で理解したらしい。どの家も大体ママが強い。

「じゃあ、私もご馳走様。凛太郎今日も美味しかったありがとう」
 そうにっこり笑えば「はいはい。お粗末さまです」と凛太郎が言う。

「夫婦か」
 はっ、と鼻で笑う千颯を一瞥して凛太郎に笑いかける。

「どっちに似たんだと思う? このバカ息子」

***

「リンちゃん、ごめん今日も夜いらないや」
「玲くんごめんね、夜ご飯なしでよろしく」
「たいちゃーん、うわそんな睨まないで。ご飯なしで……」


「あの、千颯くんって彼女さんいるのかな」
 今日も今日とて夜ご飯いらない宣言をして行った千颯の席は空いたまま。梨帆が不思議そうにじっと見ていた。
「一応確認だけど、千颯はおすすめしないよ?」
 ぼそりとこぼされた言葉にそう返せば、いつものように慌てて否定に入った梨帆を見て安心した。わざわざそんな難しいところを引かなくても、と思ったので。

「ちがっ、その、ずっと夜いないから」
 聞いちゃダメ奴? みたいな顔して不安そうにしているその姿さえキュート。凛太郎、見てよと視線をやれば「はいはい」と肩を落とされた。

「まあ、女だろうなあ」
「女だろ」
「大学生の家にでも泊まってんじゃない?」
 一様に頷いた言葉に梨帆がぎょっとする。

「えっと、彼女さんじゃなくて……?」
「んなん、彼女じゃなくてただのセ」
「たいちゃん、マジで黙って。梨帆の耳が汚れる」