小鳥たちの庭園

 わあ、いい笑顔。見上げた先のイケメンの笑顔に黙って頷く。これ以上キッチンの邪魔をすれば修羅がやってくることだろう。茉子は手を洗い直して、大人しく皿を並べることにした。

「で、茉子。神崎さんは?」
「竜久のとこー。一応ここきて1週間経ってるから様子見を兼ねてだってさ」
 そういうと凛太郎は納得したようで、味噌汁の入れ物を一枚抜いた。

「いや、帰ってくるんじゃない? 多分、あいつもJKとご飯はしないでしょ」
 会社員男性、JKとパパ活。ありもしない新聞の小見出しを思い浮かべ、首を振った。

「え、でもまこちはご飯食べてくるじゃん」
「そりゃ付き合いの長さの問題でしょ。兄みたいなもんだからさ」
 千颯の言葉に肩をすくめれば、不思議な顔をされる。
「というか、千条さんとまこちの関係ってさ」

「ただいまです!」
「ただいま」
 千颯の言葉と被さるようにして玄関の扉が開く音がした。リビングの扉を開けて出迎えれば、梨帆と春の姿が見えた。

「2人ともおかえり〜、駅で一緒になったの?」
「駅ってか玲のバイト先」
「千条さんとお話をしたのが玲くんのバイト先だったので」
 どうやら、春は玲のバイト帰りを拾おうとして寄ったカフェで梨帆を見つけたらしい。

「じゃあ、玲くんは?」
「ここにいますよ」
 そう言って玄関が開いたかと思うと玲が少し息を切らした状態で顔を覗かせた。

「スマホ、駅に忘れたらしい。ホント、鈍臭い」
「いやぁ、ちゃんと持ってたつもりだったんですけど」
 玲があはは、と頬をかく。