小鳥たちの庭園

「でしょ? まあ、悪い人はいないからさ。それに、家の中のことを内緒するだけだから、恋愛とかは自由なので、ね? おすすめはねぇ」

「ちょっ、茉子ちゃん!?」
 ええっと、と口元に指を当て考える素振りをすると、梨帆が慌てた様子で両手をブンブンと左右に動かす。

「あ、もしかして彼氏いる?」
「いないけど、そう言う問題じゃなくて」

 梨帆、あわあわ。
 諸君、りほりほは彼氏がいないらしい。
 どうせうるさいと怒られそうだが、心の中で彼らに向けてエールを送る。

「まあ、まだみんなのことよく知らないと思うから知ってけばいいよ。好きな人できたら教えてね」
 クスクスとからかえば、梨帆がもう〜と、頬を押さえて、恥ずかしそうに俯く。リアクションオブザイヤーを捧げたい。

「じゃあ、とりあえず困ったことがあればなんでも言って。改めてよろしくりほりほ」


***

「たっだいま〜」
 扉開けた途端に広がるいい匂いに心躍る。今日の食事当番は確か凛太郎。絶対美味しいもの作ってる。ぜーったい、美味しい和食セットだ。匂い的に肉じゃがかな?
 なんとなく予想をつけながら廊下を渡ってリビングに出れば炒め物のいい音と、鍋の煮えるぐつぐつという素敵な音が聞こえた。

「肉じゃが?」
「おかえり。当たりだよ。さっさと手を洗って皿の準備手伝って」
 まるで母親のようなことを言う凛太郎に軽く下唇を出しながら「はぁい」と煮え切らない返事をすれば、箸の先のじゃがいもをこちらに向けられた。