小鳥たちの庭園

 ふふっと笑えば、水谷は「こんなに愛してくれる可愛い子がいるなんて大雅幸せだね」とニコニコ笑う。邪気のない笑みに大雅が「もうお前黙れ」と水谷を小突く。

 ときどき思うけど、この人天然入ってるんじゃないだろうか。悪意がないとわかっているからこそ珍しく強気に出ない大雅を眺めていると、梨帆が自分より少し背の高い百合を見上げていた。

「えーっと……茉子ちゃんっていつもあんな感じなの?」

「そうね。結構オープンにああやってやるから茉子の顔は広いわよ。相川くんに会うたびにあんな感じだし」

「すごいなぁ」

 そのすごいは果たして尊敬のようなすごいなのか、ドン引いているすごいなのか。ある種感嘆の声をこぼす梨帆に対して百合がため息をつく。

「それに茉子が相川くんに会うことによって喜んでいる奴が約一名そこにいるし」

 そんなこんなを話してる手前で水谷の視線が後ろに向く。

「やほー彩ちゃん」

 百合の少し後ろにいる彩に気付いたのか水谷が小さく手を振る。

「やほー、水谷くん。今日も大変だね」
「案外これ見てるのも楽しいから俺はいいんだけどね」

 そうやって会話が弾んでいるのを見ていると百合と目があった。少しだけ声を落として、百合が梨帆に笑いかける。

「ほらね」

 言葉までは聞こえなかったけれど、たぶんそんな感じの口の動き。彩と水谷を近づけるのが目的というわけではないけれど、副産物として彩が喜んでいるのならそれはそれは喜ばしいことである。

「もう時間だから行くけど、たいちゃんもお昼から頑張ってね!」