それは、突然の出来事だった。






「ねぇ、想」
私が声をかけると、幼馴染の双葉 想はもう、放課後だというのに、後頭部の黒い寝癖を揺らしながら私の方を向いた。

「どうした?犬のフンでも踏んだか?」

「え、踏んでないけど……。それに私、まだ何も喋ってないよ」

「うん、知ってる」

そう答えるあなたに、聞こえるように大きくため息をついたが、あなたは何も聞こえてないかのように「腹減ったなぁー」と、独り言を言う。

そんなあなたに、「なんか食べれば?」と、答える私と、「そうする」と言ってスマホをいじるあなた。

「スマホいじりながら歩いてると危ないよ」

そんな風に注意しても、「はいはい」と流すあなた。

本当に、犬のフンを踏んでしまえばいいのに。