「素直なところが危うい」

「え、なに?」

「二度と他の男になびくなよ」

「なびいてなんかないよ」

ぷうっと頬を膨らませれば薫くんは立ち上がって私の横に来る。
私を見下ろす薫くんは柔らかく微笑み、優しく頬を包んだ。

「俺がお前を守るから、俺から離れるなよ」

トクンと胸が高鳴る。

離れたくても離れられない。
きっと私のせいで薫くんの評価が下がったりしつこく追いかけられたりしているくせに。
だから離れたかったのに。
薫くんの迷惑になりたくないのに。
それなのに薫くんは私を離してくれない。

「誰かに何かされたり嫌な思いをすることがあったらすぐに俺に言え」

「うん。でも大丈夫だよ」

「大丈夫じゃないから言ってるんだ。お前はすぐに一人で抱え込もうとするから。それは俺が許さない」

「そんなこと――」

「そんなことある」

ぴしゃりと言われて私は口をつぐむ。

薫くんにはかなわない。
何もかもお見通しみたいだ。
こんなとりえも何もない私なんかの、何がいいんだろう。

「薫くんって、もの好きだよね」

「はあ?」

「だって、私のこと好きだって、まだ夢を見ているみたいなんだもの」

どうか薫くんの気まぐれでありませんように。
薫くんの気持ちを信じていないわけじゃないの。
ただ私に自信がなさすぎて、ふとそう思ってしまう。
だから、だからね――。

「ちゃんと薫くんに見合う女になるからね」

頑張って努力して、薫くんの彼女だって胸を張って言えるように、薫くんに釣り合うようにしなくちゃ。