俺様男子はお気に入りを離さない

結局鬱々とした気分のまま文化祭当日を迎えてしまった。
菜穂や沢田くん、御堂くんが助けてくれたおかげで、あれから彼女たちに嫌なことは言われていない。けれど御堂くんとはそれっきりしゃべっていないし、私の気持ちは引きずったまま。
失恋の痛手が大きすぎて気持ちがついていかないのだ。

「秋山さん、休憩交代しよう」

「うん、ありがとう」

おばけ屋敷の受付を代わってもらい、私は行く当てもなくトボトボと歩き出した。
菜穂は実行委員として仕事があるらしく、なかなかに忙しく駆り出されている。
しかたなく一人で見て回ろうと思ったのだけど「秋山」と呼ばれて振り向いた。

「沢田くん、どうしたの?」

「休憩だろ? 一緒に回らないか?」

別に断る理由もなく、私は「いいよ」と頷いた。
目的もなくぶらぶらと歩く。

クレープ屋をしているクラスから甘い香りが漂い、その香りにつられて買い食いしてみたり。
写真部の趣味全開写真展覧会を覗いてみたり。
外部からもたくさんの人が訪れ、学園内は賑やかな声で溢れていた。

「次はなにを見に行く?」

沢田くんが学園祭のプログラムを広げて見せてくれる。

「そうだなぁ」

と覗き込んだところで、沢田くんと距離が近いことに気づいてドキリとする。

そういえば私ってば沢田くんに告白されてたんだった。
返事してないけど、沢田くんはどう思っているんだろう。

チラリと見やれば視線が交わり、ふと目尻が落とされる。

「どうした?」

「あ、いや……えっと……」

口ごもると沢田くんは曖昧に笑った。

「もしかしてこの前のこと気にしてる?」

「あ、うん……」

「返事なら気にしなくていいよって言いたいところだけど、もらえると嬉しいかな。結果はわかってるんだけど、ちゃんと秋山の口から聞きたいっていうかさ、けじめつけたいっていうか」

「そ、そうだよね」

沢田くんの言うことはもっともだ。
私は自分の気持ちばかり優先させて、沢田くんのことを蔑ろにしている。
沢田くんはこんなに優しくしてくれるのに。