俺様男子はお気に入りを離さない

先ほどまでクラスの皆に囲まれていた御堂くんが、いつの間にか私の隣に来ている。

驚きすぎて御堂くんをまじまじと見てしまう。

「押しつけてなんかいないよ。ただ、壊れてたからそれを伝えただけ……」

御堂くんの鋭い視線に勢いの良かった女子たちは牙を抜かれたように声が小さくなっていく。

「お前らが触って壊したんだろ、責任持って直せよ」

「壊してなんか……ねえ?」

「う、うん」

「あのさ、ごめんけど、その雑なところは俺が塗った。気に入らなかった? 塗り直してもらってもいいけど」

沢田くんもフォローしてくれ、彼女たちは居心地悪そうに「行こ」と言ってその場を離れていった。

「なにあれ、感じ悪い」

菜穂はぷりぷり怒り、対照的に私はほっと胸を撫で下ろす。

「あの、ありが……」

お礼を言おうと口を開くと同時に「秋山」と御堂くんから酷く冷たい声音で名前を呼ばれ心臓がドキリと跳ねた。

「お前はやっていないんだろう? だったらちゃんと反論しろ。やってもいないことに謝ろうとするな」

私は口をつぐむ。
御堂くんの言う通りだからだ。
その場が丸く収まればいいと思って謝ろうとしていた。

それは悪いこと?
でもそれが一番揉めないし、誰も傷つかないし迷惑かけないでしょ?

そうやって言いたいのに私の喉は何かにつかまれているみたいに苦しくて言葉が出てこない。
御堂くんは何も言えない私を一瞥すると、ため息交じりに言い放つ。

「そうやって自分一人で抱え込むところ、好きじゃない」

吐き捨てるような言葉。
去っていく後姿が妙に遠く感じて私はぼんやり立ち尽くした。

――好きじゃない

ぐわんぐわんと頭の中を反芻する。
まるで失恋したみたいにショックが大きく、なにも考えられなくなった。

ううん、きっと失恋したんだ。
御堂くんは初めから私のことを好きじゃなかったとしても、結構仲良くなれたかなって思ってた。
でも私がイジイジしているから嫌われちゃった。

「千花子、大丈夫?」

「秋山さん、御堂は口が悪いから気にしなくていいよ」

二人が気遣ってくれるも頷くことしかできず、鼻の奥がツンとして苦しくなった。

おかしいな。
私は御堂くんから身を引く覚悟があるのに。
そうやって嫌われて都合がいいはずなのに。
どうしてこんなにも胸が苦しくて張り裂けそうなんだろう。