「な、んでっ……」
「千花子が可愛いしキスしたくなったから。何か文句あるか?」
「あ、あるよ! 御堂くんのばか!」
私は勢いのまま叫ぶと、カバンをひっつかんで逃げるように教室を出た。
触れられた唇が熱い。
そっと唇に触れる。
まだ柔らかな余韻が残っていて、心臓はバクバクとしたままだ。
――何か文句あるか?
御堂くんの強引で有無を言わせない声が頭の中を反芻する。
あるよ。
文句ならあるに決まってるじゃない。
ほんとに、いつもいつも強引なんだよ。
なんでキスするのよ。
美術室とは違う、普通の教室で。
誰が来るかもわからないのに。
誰かに見られたらどうするの?
また女子に執拗に追いかけられたらどうするの?
ううん、それよりも。
なんでキスするの?
御堂くんは私のことどう思ってるの?
こんなことされたら、あきらめようとして抑えてる気持ちが溢れ出てきちゃうじゃない。
強引なのに……嫌じゃなくて……。
それが余計に私の気持ちをぐちゃぐちゃにする。
人の気も知らないで。
ほんとに……、御堂くんのばか……。



