俺様男子はお気に入りを離さない


「千花子!」

「きゃあっ!」

突然名前を呼ばれて跳び上がるほど驚いた。
見れば教室の入口で不機嫌そうな顔をした御堂くんが腕組みをして立っている。

「み、みみみ、御堂くん?!」

「沢田と何してた?」

不機嫌さを隠さない低く冷たい声。
まるで怒られているみたいで体がキュッと縮まる。

「別に何もないよ」

つと口をついて出た。

何かあったかと言われれば、「告白された」けれど、そんなこと御堂くんに言えるわけがないし言ったらなんかヤバいことになりそうな気がする。
そんなオーラが御堂くんから出ている気がするもん。

私は努めて冷静に返事をした――つもりだった。

「そんなわけあるかよ。だったらなんでそんな真っ赤な顔してるんだ」

ハッとなって慌てて両頬を押さえる。
ほてった頬はいまだ熱を帯び、御堂くんの言うとおりきっとまだ赤いのだろう。

「な、何でもないったら」

慌てて顔を背ければ、いつの間にこちらに近寄ったのかすぐ隣に御堂くんの気配。

と思ったのも束の間――。

むんずと顎を掴まれ御堂くんの方を向かされる。

「俺以外にそんな顔見せんな」

狂おしげな表情が見えたのは一瞬で。
そのまま唇に柔らかな感触。

「んっ……ぐっ……」

息もつけないほどに塞がれた唇。
ドンドンと御堂くんの胸を叩くも離してもらえない。

ようやく離れたときには、ぷはっと大きく息が漏れた。