俺様男子はお気に入りを離さない

「あー、その様子だと、去年は俺の存在気づいてなかったっぽいな」

「あ、えと、ごめん」

「いいよ。秋山はずっと御堂のことばかり見てたの知ってるし」

ギクリ、と肩が揺れた。
何も言えないでいると、沢田くんは頭を掻きながら小さく笑う。
そしていたずらっぽい眼差しで私を見据えた。

「やっぱり図星?」

「な、なんで?」

「見てたらわかるよ。でもさ、たとえ叶わなくても気持ちは伝えたいと思って」

カアアッと顔が赤くなるのがわかる。
私が御堂くんを好きなこと、沢田くんにはバレていたんだ。

それなのに、沢田くんは私に告白をしてくれた。
その気持ちは嬉しいけど、どうしたらいいかわからない。

沢田くんの優しさとそれを素直に受け入れられない申し訳なさ。頭がぐちゃぐちゃで上手く言葉が出てこなくてしどろもどろになってしまう。

「困らせてごめん。じゃあ、先帰るな」

沢田くんは返事を急かすこともなく、爽やかな笑顔ひとつ置いて教室を出て行った。

「あの……ありがとう」

かろうじて口をついて出たお礼は、果たして聞こえたのかどうなのか。

まだドキドキする胸を押さえながら私は小さく息を吐いた。

まさか告白されるなんて思わなかったから、予想外すぎて思考が追いつかない。

――たとえ叶わなくても気持ちは伝えたいと思って

そんな風に思ってくれることが嬉しくて心がぽわっとあったかくなる。

私も――。

私もいつか御堂くんに気持ちを伝えることができるだろうか。