俺様男子はお気に入りを離さない


「私が御堂くんと一緒にいるのは私たち学級委員だからよ。週に一回委員会があるの。ただそれだけ」

「な、なーんだ」

「安心した?」

「うん、安心……って!」

私が胸をなで下ろすのを、菜穂はニヨニヨしながら眺める。
やばい、これじゃ私が御堂くんを好きだと言っているようなものじゃないか。

「もー、私にはバレてるんだから頑張って隠さなくていいってば」

「絶対、絶対言わないで。秘密にしてよ」

「別に誰にも話さないけどさ、じゃあ教えてよ。なんで御堂くんと一緒にいたの? もしかして付き合ってる?」

「ま、まさかっ!」

私は首がもげるほど横に振って否定する。

「たまたま、美術室に逃げ込んできて……」

「逃げ込む? あー、御堂くんも大変だよね。毎日追いかけられてさぁ」

多くを語らずとも菜穂は納得してくれる。
御堂くんとはそういう人なのだと菜穂もわかっているみたいだ。

「……だよね」

「で、匿ってあげてたの?」

「ま、まあ、そんなところ」

ふーん、と菜穂は楽しそうに笑う。

本当は勉強を教えてもらったり、キスされたりしたけど。
さすがに親友の菜穂にもまだこのことは言えない。
言えるわけがない。

「じゃあ今日は千花子にとってラッキーだったってことだ?」

「うん、そうかも。ラッキーだった」

「同じクラスなんだし、もっと仲良くなれるといいね」

「そうなんだけど、クラスじゃ緊張してしゃべれない。それにいつも御堂くんのまわりには誰かいるもの」

「確かに」

私たちはクラスでの光景を思い出して笑う。

本当に御堂くんの人気は凄まじくて、絶えず女子が取り囲んでいたり男子が下僕のように御堂くんを守っていたりして、ちょっとした芸能人張りなのだ。

私のような引っ込み思案な女子は当然話しかけられるわけもなく、そして菜穂のような御堂くんに興味ない女子も少数いるわけで。
いつも遠巻きに眺めているだけなのだ。