俺様男子はお気に入りを離さない


ドキドキと心臓が張り裂けそう。
なんでこんなこと聞いちゃったんだろうと思ってももう遅い。

御堂くんの気持ちが知りたかったから。

「じゃあ、もう一回してみるか?」

くっと顎をつかまれ御堂くんの方を向かされる。
切れ長で意志の強そうな瞳がしっかりと私をとらえた。

ドキンと体中に電気が走った。

もう一回?
もう一回って?

まるで蛇に睨まれた蛙のように動けないでいると、どんどん御堂くんの顔が近づいてくる。

甘くて色っぽくて、私を虜にする。

「芋子、可愛い」

小さく囁かれ私の緊張は限界に達した。
思わず目を閉じる。

けど――。

ブブブ……ブブブ……

突然鳴り出すスマホにびくっと肩を揺らし我に返った。

机の上で踊り出さんばかりのスマホが小刻みに揺れて早く取れと急かしているよう。
あわわと御堂くんからすぐさま離れて電話に出れば、親友の菜穂からだった。

『もしもし千花子? そろそろ帰る?』

「あ、うん、そうだね」

『じゃあ昇降口で』

「わかった」

ふう、とスマホを置けば冷ややかな視線に私はハッとなった。

そうだった、御堂くんからとっさに距離をとったんだった。
つまりその、キスを拒否したことに……なっちゃう?