中間試験を前にして部活動はすべて中止になった。
だけど私はいつもと変わらず美術室へ行く。
部活をするためじゃなくて、静かな美術室で勉強するためだ。
教科書とノートを机に広げてまずは数学から取りかかる。
ガララッと音がして顔を上げれば、御堂くんがきょとんとした顔をした。
「今日は絵描かねえの?」
「中間試験前だから部活は中止になってるよ?」
「ああ、試験か」
御堂くんはいつもの席に座りスマホをいじる。
時おりチラチラとこちらを見ている気がして私は気が気ではない。
「あ、あの、御堂くんは勉強しないの?」
「芋子を見てる方が楽しい」
「み、見ないで」
「そこ、間違ってるぞ」
「えっ?」
御堂くんは私のノートを覗きながら指を差して指摘する。
「どこ?」
「ここ」
隣に来た御堂くんはノートを指でなぞりながら数式を説明してくれる。
ドキリとしたけれど、それよりも説明が丁寧で上手くて聞き入ってしまった。
「あ、そっか、そういうことかぁ」
「簡単な引っかけ問題だ」
「うん、ありがと――」
お礼を言うため顔を上げれば思ったより近い御堂くんの顔。
座っている私の隣に立ってノートを覗き込んでいたみたいで、御堂くんに見下ろされる形になっている。
ふわっといい香りがした瞬間、唇に触れる柔らかな感触。
「お前、可愛いな」
それが私のファーストキスだと気づくまでに数秒はかかった。
だけど私はいつもと変わらず美術室へ行く。
部活をするためじゃなくて、静かな美術室で勉強するためだ。
教科書とノートを机に広げてまずは数学から取りかかる。
ガララッと音がして顔を上げれば、御堂くんがきょとんとした顔をした。
「今日は絵描かねえの?」
「中間試験前だから部活は中止になってるよ?」
「ああ、試験か」
御堂くんはいつもの席に座りスマホをいじる。
時おりチラチラとこちらを見ている気がして私は気が気ではない。
「あ、あの、御堂くんは勉強しないの?」
「芋子を見てる方が楽しい」
「み、見ないで」
「そこ、間違ってるぞ」
「えっ?」
御堂くんは私のノートを覗きながら指を差して指摘する。
「どこ?」
「ここ」
隣に来た御堂くんはノートを指でなぞりながら数式を説明してくれる。
ドキリとしたけれど、それよりも説明が丁寧で上手くて聞き入ってしまった。
「あ、そっか、そういうことかぁ」
「簡単な引っかけ問題だ」
「うん、ありがと――」
お礼を言うため顔を上げれば思ったより近い御堂くんの顔。
座っている私の隣に立ってノートを覗き込んでいたみたいで、御堂くんに見下ろされる形になっている。
ふわっといい香りがした瞬間、唇に触れる柔らかな感触。
「お前、可愛いな」
それが私のファーストキスだと気づくまでに数秒はかかった。