「お誕生日おめでとう」
朝起きると、先に起きていた咲夜くんが言った。
「え、うそ、ありがとう」
私にとって、お誕生日おめでとうはあってないようなもの。
お父さんと暮らしていたときは当然誕生日を祝う風習なんてなかったし、ひだまりの家では人が沢山いるからそれどころでは無い。
学校から帰って春日井さんとすれ違った年は、お誕生日おめでとうと声をかけられる。
そんな人生だった。
だから朝起きて、おはようの前に祝われることは今まで生きてきた中で初めての経験だった。