明日から夏休みだ。
授業から解放されて教室内が一気に浮かれモードになる中、私は怒られるのではないかという恐怖でいっぱいだった。
担任の先生に帰りのHRが終わったら学園長室へ行くように指示されたから。
何したっけ、私。
テストの点をもう少しあげましょうとか?
でも学園長直々に言われるのかな?それ。
この学校に相応しくないって言われる?
……有り得そー。
目の前の扉をノックして、恐る恐る学園長室へと足を踏み入れる。
「笹倉さん。ごめんね、急に呼び出したりして」
ここ座って、とソファに案内される。
「あの、ご用件って……」
私が聞くと、お茶の入った湯呑みを2つ置いて緊張した眼差しで話し始めた。
「今、応接室に笹倉真司さん……あなたのお父さんが来ているの」
お父さん。
そのワードは私にとって恐怖そのものだった。
「あなたに直接会って謝りたいって仰られてるんだけど……。怖いわよね。嫌なら帰ってもらうように伝えるわ」
ものすごく怖い。
でも今なら、咲夜くんが大丈夫になった今なら、お父さんを克服することが出来るかもしれないと思った。
謝られるだけなら大丈夫だと。
「……それだけなら、大丈夫です」
意を決して答えた。
「……そう?無理してない?」
心配そうな目で聞いてれる。まるで話で聞くような母親みたいだった。
「はい、大丈夫です」
私が言うと、数回頷いた学園長は優しく微笑んでくれた。
「あなたに何かあった時のために一応私達もドアの外で待ってるわね」
そう言われて案内された扉の前に立つ。
これが間違いだったと分かるのは、扉を開けて少し時間が経ってから。