さすがにこの話は外ではできない。
ちゃんと話をするために、ひだまりの家から寮までは寄り道をせずに帰った。
「私はね、5年間ひだまりの家で過ごしたの」
そこまで言って、グッと手を握る。
大丈夫。咲夜くんなら受け入れてくれる。
ゆっくりと息を吐いて、話そうと口を開く。
「ちょっと待って。隣行ってもいい?」
「あ、はい」
私が返事をすると、正面から横の椅子へと移動して、私の手を優しく包み込んだ。
「怖くない?」
「うん。咲夜くんなら大丈夫」
「よかった。そばにいるから、ゆっくりでいいから。聞かせて?」
その言葉に背中を押された。
「虐待されてた。物心ついた時から小学5年生の時まで、ずっと。お母さんは私が産まれると同時に死んじゃったから、お母さんが死んだのは私のせいだって」
そこまで言うと、私の手を包む咲夜くんの手に力が篭もる。
それでも何も言わずに、頷いてくれた。
「一軒家だったのと、お母さんの趣味かな?結構大きい庭が広がってて、誰も気付いてくれなかった。……もちろん、誰にも言えなかった」
「……うん」
ググッと自分の手に力が入るのがわかる。
響く声、ガラスの割れる音。
まるでドラマの回想シーンみたいだ。
「毎日殴られた。毎日、怪我してた……。毎日怒鳴られて、名前なんて呼んでもらえなかった」
お前、お前、お前。お前ばっかりだ。
震える声を、深呼吸をして落ち着かせる。
「比菜、手繋ごう」
力が入って震えている手をゆっくり開いて、私の手のひらに咲夜くんの手のひらが触れた。
温かい。
手のひらの優しい温かさを感じることが出来て、少し落ち着いた。
「唯一名前を呼んでくれたのは、お酒とタバコを切らしたときと、誰かの前だけだった」
比菜と呼んでくれたのは、数えられるくらいしかない。
「5年生の夏にね、やっと警察の人が気付いてくれたの」
暑い、汗が吹きでるような夏の日。
日差しがジリジリと照りつけるあの夏の日。
「学校帰りに結構盛大に転んじゃって、警察の人が立たせてくれたの。その時にお腹に手が触れて、痛いって声が出た」
それが恐怖であり、救いを求められる唯一の方法だった。
咲夜くんは黙って、でも辛そうに私の話を聞いてくれている。
「心配した警察の人が病院に連れていってくれた。そしたらお腹とか見せるでしょ?そのときに。それからお父さんは逮捕されて、私はさっきのひだまりの家に行くことになった」
「……警察の人は怖くなかった?」
そう聞かれて思い返すも、警察官は大丈夫だった。
きっと私の中で、習ったままの正義のヒーローだと思っていたからだろう。
「うん。でもずっと、それ以外の男の人は怖い」
咲夜くんはもう大丈夫だよ?とフォローすると、安心したように肩をなでおろした。
「よく頑張ったよ。比菜、頑張った」
繋がれた手を軽く上下に振りながら言う咲夜くんの言葉が、じんわりと私の胸に暖かく響いた。
ちゃんと話をするために、ひだまりの家から寮までは寄り道をせずに帰った。
「私はね、5年間ひだまりの家で過ごしたの」
そこまで言って、グッと手を握る。
大丈夫。咲夜くんなら受け入れてくれる。
ゆっくりと息を吐いて、話そうと口を開く。
「ちょっと待って。隣行ってもいい?」
「あ、はい」
私が返事をすると、正面から横の椅子へと移動して、私の手を優しく包み込んだ。
「怖くない?」
「うん。咲夜くんなら大丈夫」
「よかった。そばにいるから、ゆっくりでいいから。聞かせて?」
その言葉に背中を押された。
「虐待されてた。物心ついた時から小学5年生の時まで、ずっと。お母さんは私が産まれると同時に死んじゃったから、お母さんが死んだのは私のせいだって」
そこまで言うと、私の手を包む咲夜くんの手に力が篭もる。
それでも何も言わずに、頷いてくれた。
「一軒家だったのと、お母さんの趣味かな?結構大きい庭が広がってて、誰も気付いてくれなかった。……もちろん、誰にも言えなかった」
「……うん」
ググッと自分の手に力が入るのがわかる。
響く声、ガラスの割れる音。
まるでドラマの回想シーンみたいだ。
「毎日殴られた。毎日、怪我してた……。毎日怒鳴られて、名前なんて呼んでもらえなかった」
お前、お前、お前。お前ばっかりだ。
震える声を、深呼吸をして落ち着かせる。
「比菜、手繋ごう」
力が入って震えている手をゆっくり開いて、私の手のひらに咲夜くんの手のひらが触れた。
温かい。
手のひらの優しい温かさを感じることが出来て、少し落ち着いた。
「唯一名前を呼んでくれたのは、お酒とタバコを切らしたときと、誰かの前だけだった」
比菜と呼んでくれたのは、数えられるくらいしかない。
「5年生の夏にね、やっと警察の人が気付いてくれたの」
暑い、汗が吹きでるような夏の日。
日差しがジリジリと照りつけるあの夏の日。
「学校帰りに結構盛大に転んじゃって、警察の人が立たせてくれたの。その時にお腹に手が触れて、痛いって声が出た」
それが恐怖であり、救いを求められる唯一の方法だった。
咲夜くんは黙って、でも辛そうに私の話を聞いてくれている。
「心配した警察の人が病院に連れていってくれた。そしたらお腹とか見せるでしょ?そのときに。それからお父さんは逮捕されて、私はさっきのひだまりの家に行くことになった」
「……警察の人は怖くなかった?」
そう聞かれて思い返すも、警察官は大丈夫だった。
きっと私の中で、習ったままの正義のヒーローだと思っていたからだろう。
「うん。でもずっと、それ以外の男の人は怖い」
咲夜くんはもう大丈夫だよ?とフォローすると、安心したように肩をなでおろした。
「よく頑張ったよ。比菜、頑張った」
繋がれた手を軽く上下に振りながら言う咲夜くんの言葉が、じんわりと私の胸に暖かく響いた。



