暗い部屋にただ一人(短編・完結)

ああ、この声。


どうして気がつかなかったのだろう。


いつだって夕凪は僕に語りかけてくれていたのに。


いつだって僕から見える場所にいて、話す声が聞こえる所にいてくれたのに。


僕が売られるのを止めてくれたのは夕凪だった。


僕は夕凪のことを母と思っているのかもしれない。