凌が提案すると、ましろは子どものように「やった!」とはしゃぎながら短冊を手に取り、用意されている油性ペンで願い事を書き始める。チラリと凌がましろの手元を覗くと、そこにはドイツ語が書かれていた。

「何でドイツ語で書いてるんだよ?」

「だって、みんなにジロジロ自分の願い事を見られるってちょっと恥ずかしいじゃん!」

じゃあ何であんなにはしゃいでたんだ、と心の中で凌はツッコミつつ、痛みと高鳴りを感じる胸にそっと触れる。まだ心の中にあの感情は残っている。だが、きっともう大丈夫だ。

書けた短冊をましろが吊るしに行っている間に、素早くペンを動かして願いを書いていく。書き終わった瞬間、凌はまた泣きそうになってしまった。

「凌ちゃん、願い事は何を書いたの?」

「内緒だ!」

ましろにそう言い、凌は笑う。無理にでも笑う。泣きそうになっても笑う。

『世界で一番大好きな君が、世界で一番幸せになりますように』