君の見ていた空


 龍道さんは、悲しそうにそう言っていた。

 龍道さんは家族の愛を感じながら育ったけど、多分、本妻の息子は家族の愛を知らないはずだと……。
 本妻が気狂いになったという情報やその後死んだという話や、その他にも色々と暗い話題が本妻とその息子にはあったらしい。

 龍道さんは、本妻の息子に会った事がないけど、存在はしていると確信しているそうだ。
 獄門組には、一見分からないが、とてつもない業を感じるらしい。組にいると、血の匂いと、哀しみと苦しみ、絶対に赦さない、誰の事も最上の幸せにはしないという怨念のようなモノを感じるらしい。
 
 先代組長の妾達は口を揃えて、多分、本妻の息子が怒り狂っているからだと言っているそうだ。
 妾達は、本妻の事をあまりにも大切にしない先代組長に苦言を呈する事はあったのだが、何も変化は無いし、自分達の生活と子ども達の生活を優先していたらしい。
 子ども達の良い学校への進学、その後も結婚先の決定や、就職先の決定に安堵していたそうだ。

 先代組長が亡くなってからも、自分達の生活が何一つ変化しなかった事が余計に怖かったらしい。
 妾の子ども達は、そんな組内の環境に息苦しさを感じ、どんどん外の世界に出て行ったそうだ。
 学校に行くより、さっさと就職したり、結婚したりと、今はもう、組内には誰も残っていないらしい。

 龍道さんは、俺も獄門組から出る事を薦められたけど、どうしても、本妻の息子の事が気になって出て行けなかったそうだ。 
 彼は、見た事も会った事も無い異母弟の事が気がかりで、組から出て行く事は見捨てる事と同じだと思い、いつかその怒りや苦しみから抜け出せるまで、獄門組にいる事を決意したそうだ。