ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その32
夏美



さあ、決戦ステージの最前列に到着したぞ

バイクを降りた私は、後輩を連れて急いで走った

「多美ー!後方は大丈夫よ」

祥子が戦っている今、表向きでは南玉の最高責任者となる本田多美代へ、私は”速報”を早口で伝えた

「あっ、相川先輩、すいません。じゃあ、心配なしですかね?」

「ええ。ガラ悪は”複数”確かにいたけど、今日は何も起こらないわ。安心して」

「はい、ありがとうございます。…久美、真樹子さんに伝達いいかな?片桐さんと迫田さんの出番はなさそうだとも…」

「了解」

北田久美は岩本真樹子の元へ走って行った

さすがに多美は胸を撫でおろしたかのような素振りを見せたが、目線はすぐに戦いの場に移したわ

当然私も…

さあ、こうとなれば、祥子とバグジーこと、柴崎典男の決着だよ!

この結果で、長きに渡った排赤×反排赤の対立図式には終止符が打たれる

まさに最終決着の時を迎えてるんだよ!


...


「おお、夏美!ご苦労さん…。いやあ、凄いことになってるよ。津波祥子の嵐のような殺人フルコースを2度も凌いだぞ、あの男…」

ここで鷹美が言葉を挟んだんだけど…

「南部さん、柴崎は男じゃないかもしれません」

えー?

何言ってんだろう、鷹美のヤツ

「どういうことよ、鷹美…」

「いえ、ただなんとなくです。…いずれにしても、相手は死に物狂いできますよ、次は。両者ともに、体力は限界に近い状況でしょうし、この後の組み合いがヤマになります…」

「祥子には、なんか秘策は授けてあるのよね、鷹美!」

私はややヒステリックな言いようで、鷹美に迫った

それに対して、鷹美は至って冷静に答えてくれたわ

「最後の決め手は温存させています。問題は、勝負時のタイミングを捉えられるかです。ましてや、ここまでの疲労に達すると、あの頑丈な男に、どこまで通じるか…」

「でも矢吹さん、相手だってもう立ってるのがやっとじゃないのか。掴み技へのディフェンスも受けてるし、向こうも決定打になる攻撃となれば難しいと思うけど」

「でも、まだ奥の手があるように思えるんです。それに…、バグジーは砂垣さんらのみんなから声援を受けて、何が何でも負けられないと…。無論、それは祥子も全く同じですが、敵は今や雇われの立場を超えて、柴崎典男として戦っている。このメンタル面に至ったことは厄介ですよ…」

鷹美の見解はもっともだ

「詰まるところ、精神力の戦いか…。しかし、そうとなれば男がやっぱり有利じゃないかな」

「…」

南部さんのこの指摘には、みんな黙りこくっちゃった…

結局、ここが男と女の超え難い”カベ”ってことなかよ!


...



「そんなことありません!祥子さんは相手が男だろうと、絶対負けません!…祥子さんー、負けないでー!」

その大きな声の主は新村静美だった

現在、レッド・ドッグスのトップである静美の目は半ばキレかかっていた

「そうだ!祥子さーん、またケンカ殺人フルコースお願いしますよー!」

テツヤ君が一際でっかい声援を放つと、こっちの陣営は一斉に呼応したわ

そして、ジャッジのケイコが再開を告げた…