ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その30
多美代



「やったー!またダウンを奪ったぞ!」

私は思わずガッツポーズを取ってた

”祥子ー、いいぞ!”

”津波さん!最高ー!”

続けざまのダウン奪取で、私の隣にいる久美や静美らをはじめ、こっちの陣は狂喜乱舞に陥ってるよ

今度こそ勝ったぞ!

みんなもそう思ってるようだ


...



「矢吹先輩、どうですか、今度は!」

私と並んで最前列から祥子にゲキを飛ばしていた、コーチ役の矢吹先輩に”感触”を尋ねてみた

「うん。相手はかなりダメージを受けてるわね…」

「行けるんじぇないっすか、ヤツ、完全にノビちゃってますよ!しかし、凄えなー、今の祥子さんの猛攻は…」

テツヤも興奮した口っぷりだわ、はは…

「祥子が空手の構えを見せたのが、攻撃に入る隙を誘ったのよ。たぶん相手は、祥子が空手の訓練を受けていたことを知っていたわ。だから、今度はさっきとは違う攻撃パターンで来ると判断したでしょう。そこの心理をこっちがフェイント利用した訳よ」

「なるほど!あえて大きなモーションを必要とするとび蹴りで、バグジーが避ける動きを読んで着地と同時に、さっきと同じケンカスタイルで殴る蹴るの連発を見舞っていくと…。そういう作戦だったんですね!」

「そう」

テツヤの”分析”に、矢吹先輩は祥子とバグジーから視線を外さずに頷いた

もう周りのみんなは、サブジャッジの声に合わせて、一緒にカウントを数えてる

しかも、1カウントごとにトーンが上がってるし…


...


これは、マジ、行けかも!

「カウント7ですよ、先輩!」

「ええ、決まってくれるといいんだけど…。祥子も相当疲れてきてるから、ここで立たれるとその後はキツイしね…」

確かに、今の攻撃で相当体力を使っただろうし、次となると、威力もスピードも落ちると思う…

”エイト…、ナイン…”

”うぉー!立ったー!”

”バグジーが立ったぞー!”

”柴崎さんー、これからよ!頑張れー”

またカウントギリギリで起きてきやがったよ、あの化けもん…

「この後はどんな手で行くんですか、先輩!」

私は矢吹先輩に早口で詰問調だ

「…」

先輩は無言のまま、息を荒立たてながら向き合う二人を、じっと見据えていたわ

”いいですね…?再開です!”

おけいの声が、歓声とどよめきの中、再びこだました