その2
祥子



やっぱこの連中、考えが甘いわ

そんな安易なアタマでいくらメンツ集めたって、紅組と南玉にかないっこない

そもそも、愚連隊や墨東会は今まで散々、紅組にねじ伏せられてきたんだっての!

ふう~~

もうこんな中身の薄い議論じゃ先が見えたし、今さら口を開くのもおっくうになってきたよ(苦笑)


***


「…ちょっと!いいかな、私も発言なんですけど…?」

おお…、私の斜め正面でずっと黙ってたヤツだな

「私は迫田って者です!ええと、まず主催者側に一言呈します。フリーディスカッションは意義あるトライアルだと思いますし、みんなの意見、もっともだと私も思う。でも、もう15分堂々巡りで、この後続けても実りないと思います。早めに終わりにした方がいいですね」

アハハハ~~‼

こりゃいいや、ディスカッションが開始後15分経過して、ようやくまともなの一人発見だわ

「…私は大義もいいが、待遇を知りたい。そのためにここに来ましたんで。岩本さん、私はあなた方の求める戦力になりえる自信があります。私一人で、ここにいる10人分ってラインで捉えて下さい。で、その場合の報酬額を目安でいいわ。お願いできますか?その対価次第では、ここで退席させてもらいます」

ほー、随分とはっきり言いのけたな、この迫田って女

あまりにズバッときたんで、他の連中、コケにされてんのに拍子抜けだわ

口開けてポカンとしてるよ(笑)


***


「ああ、大場さん、どんなもんでしょうかね」

「はー?そんなん、今答えられねーよ、俺に権限ねえし」

全く、なんなんだよ、あの対応は‼

決定権もなしに主催者代表とかって、もうどうなってんだっての、今の墨東会は…‼

そしたら、また岩本さんだったわ

「ああ、迫田さんだっけ…。報酬はこの2次を通過した際に明示しますよ。ただ私からは、あなたがそこまで自信を持ってるんなら、最終で面接する人間にはしっかり一言添えると約束するわ。決して額をケチる人じゃないから。ちなみに女性になるわ、最終の面接官はね」

「そうですか。なら、最後までいますよ。…皆さん、議論の腰を折っちゃってすみませんでしたね。どーぞ、続けて下さい」

ははっ…、いいわ、アイツ…!


***



それにしても、岩本さんの”返し”は実に痛快だったよ

対する大場さんは歯ぎしりしてるし(笑)

もしかしたら墨東会は”然るべき誰か”の掌に乗っかてるんじゃないのかな

すでに…

フツーに考えれば地元ヤクザ星流会となるが…

今の岩本さんの反応を見ると、ちょっと違うんじゃないかって感じがしたな

最終審査の面接官は女だと言ってたし、迫田に答えたあの口っぷりなら、その女には報酬金額を決められる権限アリってニュアンスだった

それに、迫田の言を事前にその女へ申し添えすると言いきってたし

なら、今の岩本真樹子は大場より権限を持ってるってことなのか?

いや、もしかしたら砂垣さんさえも頭越しにできる立場ってのも考えられるぞ!

ふふ‥、じゃあ私も一つ、カマかけしてやるか


***


さあ、いくぞ‼

「えーと!…ここで、私も一言発言させてもらいますよ。ああ、名前は津波ですわ。んで…、今までの聞いてて呆れたわ。あのさー、ただ単に頭数だけいくら集めても南玉や紅組に対抗なんかできない。無駄だって」

「何よ、今まで黙ってたくせに!私たちの意見を出させたところで否定だけして。それならさ、アンタも案ぐらい出しなさいよ!」

見覚えのある数人はすでに下向いてるが、初対面のこの女は私の投げた球をしっかり受けて返球してくれたわ

へへ…、ならそのボール、カキーンと打ち返してやるぞ

「ああ、じゃあ…。いいか!何と言っても最優先なのは個々の力量なんだ、まずもってはよう。南玉と紅組の猛女どもに何とか対抗し得る、それなりに力のある者が先頭に立たなきゃ話にならないって。でだ…、今日はせっかくこうして集まったんだ。もうしゃべりすぎて口も疲れてるだろうし、どうだい…、今度は体使ってディスカッションてのは?」

「…」

「…こん中にだよ、一人でも南玉や紅組の猛女達とやり合える力のある者がいれば、とりあえずそいつがみんなを引っ張っていく。複数いれば協力体制で行く。そこに、バックと岩本さんなりの参謀格のリーダーが付く。数を集めるのはさあ、そこんとこの体制が概ね定まった後でいいんだって。さあ、言い出しっぺの私を力で屈する腕に自信のあるモンがいればどうぞだ。今ココでやってやるよ!」

私はその場で上着を脱いだ

「…真樹子、今ここで暴れるのは認められねーぞ。今日はあくまで”ディスカッション”ってことで言われてるんだ」

カーッ、しゃらくせーことを賜って‼

「大場さん、なら、外でやるよ。…さあ、私と汗かく勇気のあるヤツはいないのか‼」

私は岩本さんが答える前にビシッと言ってやったわ

さあ、誰か来い!