ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その18
ケイコ



私は、多美のカウントアウトによる勝ちを宣言した

「いいぞー!多美ー!よくやった」

「本田さん、最高ー!」

南玉サイドからは割れんばかりの歓声があがってる

一方、砂垣さんの側からも、三島優子さんに対する健闘をたたえる声が連呼されてる

戦い終わって、相手側への口撃は皆無だったよ


...



三島さんはまだ立ち上がれず、仲間の介助を受けている

一方、勝った多美も立っているとはいえ、両ひざに両手がくっつき、半腰で大きく息をついてるよ

なんか、すごい戦いだったなあ…

どうやら私は、最後のカウントの最中で意識が2重層に及んでいたのかもしれない

サブジャッジの二人がカウントをダウンする声は、はっきりと聞こえていたんだけど…

ほんの数秒の間、どっかへ飛んでった自分も確かにあったような気がするんだ

「横田さん…、両者の接触はこの後の決着後にさせた方がいいだろう。本田さんには、それで承知してもらったから…。まあ、砂垣サイドへは一言投げるそうだが、静観しててくれ」

「はい、わかりました」

白石さんは、そう私に耳打ちしてくれた

多美に視線を投げると、多美は首を小さく縦に振って私へ会釈してる

三島さんの方は…

ああ、砂垣さんも寄り添ってるわ

負けたとはいえ、あそこまで意地を見せた三島さんを、みんなは温かく迎え入れてるって感じかな…


...



少しすると、多美が私の前を通過したところで立ち止まり、砂垣さんらに向かって声をかけるようだ

「砂垣さん…、私からは、この後の祥子・バグジー戦の結果をみてから、改めて申し上げますから…」

「…わかった」

多美はそれだけ告げて砂垣さんから了解を得ると、自陣営に戻ったが…

「おけい、この後も頼むな」

私の前ではちょっと立ち止まり、そう一言あったが…

私は「うん」と首を縦に振って応えるにとどめた


...


さあ…、次はいよいよ両軍の雌雄を決する対決だ

急に南玉サイドがざわついてきたよ

多美が戻り、ウォーミングアップをしている祥子と一言二言交わしてるわ

現時点では正式に総長という肩書は有していないが、今や南玉連合を背負って立つ津波祥子の周りには、南玉の主力メンバー以外にも、各グループの主だった面々が集まっている

岩本真樹子さんをはじめ、矢吹さん、迫田さん、片桐さん、湘南の波沢さん…、それに去年夏、祥子とのタイマンで敗れたことで南玉を追放されたにも拘わらず、その祥子からの強い勧めで先般南玉にカムバックした高滝馬美…

ああ、それに相川先輩と南部さんも…


...


とにかく今の私は中立な立場なんだから、感傷にふけってはいけないな

で…、今度は砂垣サイドに目をやった

バグジーさんは、戦い終えた三島さんに何やら話しかけているようだ

あの人…

砂垣さんの”バック”からお金で雇れた、いわば刺客ってことだっただけど…

なんか、ここにきて、砂垣さんたちのメンバーとは信頼関係が出来あがってるように見える

まるで固いきずなで結ばれた”仲間”のようだ…