その3
祥子



6時40分か…

まあ、この時間ならリミットで足止め完了だろう…

私は1対5の方に目をやった

さすがに熱血あっこさんも、へばって地面に両手をつき、荒い息だ…

ドッグスの1年連中も私の方を見て、どうしたものかと戸惑ってるしな

もういいさ、ここまでで…


...


「みんな、引きあげるぞ!」

「はい…」

ハハハ…、なんか連中、ホッとした顔してるわ

「津波…、まだ勝負はついてないぞ!」

矢吹さん…

「…今日、私はあんたたちと勝負をつけるつもりでここに立ちはだかったんじゃないよ。あくまで、こっちサイドの目的遂行のためですわ。要は足止めだよ。これ以上は必要ないですよ」

「ふざけんなっての!その目的とやらの為なら、やくざも使うのか!女子高生を拉致とかって、犯罪だろうが!」

”それ”を言われたら、返す言葉がないわ…

「矢吹さん、すべては今日の結果でね。…また会いましょう。お二人とも、お大事に…。おい、みんな、撤収だ!」

私らは逃げるように二人の前から立ち去ったわ


...


バイクで5分ほど走り、公衆電話を見つけた私たち6人は、そこでひと休憩とった

私はヒールズに電話して、麻衣に首尾を報告したよ

あの野郎、手抜きしなかっただろうなって、笑いながら詰問してきやがった

全く…!

アイツはこれから”大仕事”だってのに、あのリラックスぶりは何なんだっての(苦笑)


...


「祥子さん…、冷たいもんどうぞ…」

「ああ、すまん…」

静美か…

ふう…、麻衣に念押しされたんじゃ、すっとぼける訳にいかねーか…

「麻衣さん、なんか言ってました?」

「手抜きしてねーかって、突っ込まれたわ、はは…」

「…でも私は、祥子さんの判断でよかったと思いますよ。あれ以上やる理由なんてないですよ」

「…」

参ったな…


...


「…ああ、静美。お前はこの後、廃倉庫に回ってくれ」

「えっ…、次は火の玉川原じゃないんですか?」

「…麻衣のリクエストなんだ」

「わかりました。でも…」

「いいか、静美…、麻衣は私みたいな甘ちゃんじゃない。これからもヤツに本気でついて行く気なら、今みたいな考えは捨てた方がいいよ」

「祥子さん…」

私にはこれくらいしか言えないわ

静美、それに久美…、頑張れ…