その16
ケイコ



「あれは、リエだろ!」

今度は祥子が2台目のバイクを指さした

ゴロゴロゴロッ…

「わーー‼」

荷台から地面に転がっていく男二人は、ちょうど、砂垣さんらの前で止まったわ…

「砂さん、こいつら偵察隊だ!」

彼らはロープで縛られた二人を取り囲んで、心配そうにのぞきこんでる

「おい、大丈夫か⁉」

みんなでロープを解きながらあの人たち、パニクッてる

そして、私たちの間を通り過ぎた2台のバイクはUターンすると、徐行して私たちの前で止まった

二人は同時にメットを取った

「アイツ…、紅組にいた片桐ジュンだ‼」

「それに…、もう一人はたしか、迫田リエ…!」

砂垣陣営からは、呆然とした声が漏れ重なってた


...



「すなガキー、懲りないねー、アンタも。偵察くらい、もっとシャキッとしたの使いなよ!」

まさしく、片桐さんだ…!

「ううっ、うっ…」

口を真一文字の砂垣さん、さすがに絶句状態だよ

「砂垣さん、あれを見なさい!」

今度は迫田さんが北側を指さした

「あっ…、あれは…⁇」


...



何と言うことだ‼

その北側前方には、おびただしい数のバイクが、一斉にエンジンをかけ、ライトをパッシングしてる

「こっちもよ!」

次は片桐さんが南方向だ…

「祥子、百台超えてるんじゃない⁉ひょっとして…」

「ああ…」

馬美が棒読みのように祥子へ告げたが、祥子は砂垣さんらと同様、2方向のバイクの群れに目を奪われて、あっけにとられてるようだ

いや、私も、久美も克子もみんな…


...



「祥子、後は任せたよ。頑張んな!」

「リエ、あんがとな。それに片桐さんも…」

片桐さんは、祥子に向かって左手でロングホーンをかざして去っていった

そして、その後に迫田さんも続いた

迫田リエは、去年の春、高原亜咲さんのバイクを襲撃した”真犯人”だった

その時、後ろに乗っかっていた私は肘を打撲し、入院した

思えば、そこから私の運命は激変したよな…