その9
祥子



恐れ入ったよ…

この局面でここにいるメンバーに、ああいったアプローチが出来るなんて

おけいの”演説”は、およそ10分に渡った

誰もが真剣に聞き入っていたわ

静美や久美、それにさえと馬美らは涙を流していたし

あれ~?

なんだよー、あの鬼軍曹の恵川まで、目頭を熱くしてるじゃないか…(苦笑)


...



何しろ、おけいが発する言葉には、情と魂がこもってるんだよな

コイツが麻衣には一番ひどい目に遭ってるってのに、あんな気持ちに自分を持って行けるなんて…

それどころか、”そういうところ”へみんなの手も引いていく

大局を見誤らず、身も心も全力で前向きに舵を切れるピュアで強固なハート

すげえや、コイツ!

それに命がけで恋をしてるから、何とも神々しいよ(苦笑)

私は、発言を終え、ちょっと放心状態で席に腰を下ろしたおけいの膝を、軽くポンと手で叩いた

「祥子…」

私は無言でお疲れさんの笑顔をおくった


...


しばらく、その場は静まり返っていた

まあ、何人かのすすり泣きは響いていたが…

ここで議長の私が言葉を発しなければならないんだろうけど…

うーん、何とも難しいよ

ふう…、どうするか…

「議長…、今の横田の話、最もだろう。横田提案に私は賛成するよ」

はあ~~?

あんたが大反対の口火を切ったんだろうが…

でも、恵川が絶好のフリを向けてくれた(苦笑)

なら、ここで収めちゃわないとな!

「恵川さん、ご理解いただき、ありがとう!さあ、みんなはどうだろうか、横田案については…」

「賛成!」

「私も支持するわ」

パチパチパチ…

おお、乗り越えたのと違うか?

大きな壁を…

深い恩讐を…