ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その8
ケイコ



「私と多美の見解は、麻衣とは状況のやり取りだけでもつないでおく必要があるということになった。これに対して、みんなの意見を聞かせて欲しい」

祥子の投げかけには、まず、冴木ひとみが挙手した

「じゃあ、さえ、どうぞ」

「はい。この前、祥子さんとおけいに立会ってもらって、静美との握手に至った際、その前提は麻衣が金輪際、南玉にはかかわらないってことでしたよね?そうなれば、今の祥子さんの提案は筋が通りません!」

さえの言ってることは事実だし、そのまんまだ

「…そもそも、排赤派と戦う状況になったからって、麻衣と情報を共有する必要なんてありますかね?百歩譲っても、やくざの奥さんになる人なんか、我々には百害を与えること以外、何ものでもないと思うんですが…」

「さえの言う通りよ!本郷みたいなトラブルメーカーがやっといなくなってくれたんだ。そのおかげで、再び南玉が一つになれたんじゃないか。祥子、麻衣との接触は断固反対だよ!」

まいったなぁ…

恵川さんにも

仮にも後見役のOG代表の立場で、今までの蒸し返しに火をつけるような発言だもんな…

私は思わず隣の祥子と顔を見合わせたよ


...


「ええと、この際だ。他の意見も聞こう…。静美はどうかな…」

「あのう、私は何とも…。麻衣さんは年が一緒でも、尊敬してる人だから…。でも、さえと握手した経緯は彼女が今言った通りですしね…」

静美の何ともやるせない表情が、すべてを物語ってる…

ここで分厚い壁を破らなきゃ、みんなそれぞれの心から、恩讐が消え去ることはない

私は咄嗟にそう確信した


...


「議長…、オブザーバーの立場ですが、発言は可ですか?」

「ああ、おけい、発言があればどうぞ」

「はい。では…」

私は再び席を立ち、まず会場内の出席者全員の顔に目をやった

私は思った

ここにいる全員、それに本来ならここにいるだろう、本田多美代も含め、誰もが麻衣とは各々、一冊の本が書けるくらいの様々な曲折をたどってきたと…

これから本当の意味での”一致団結”には、皆が本郷麻衣という、強烈極まる個性を、自分自身の中で総括することが必要不可欠だ

それをみんなに分かってもらわなくちゃ!

私はそう胸に誓い、口を開いた