その1
祥子


そろそろお目見えだな…

「みんな、もう来るぞ!いいか、ビビらず思いっきり行けよ!」

「はい!」

とは言っても…

全員、もろビビッてるわ(苦笑)

まあ、なにしろ今夜の相手は、一昨日まで仲間だった先輩だもんな

しかも、空手の猛者と脚力自慢でケリ上手な”熱血"あっこちゃんときた

はは…、私だって気が重いって

...


しかし…

こんなにピンポイントで、人の居場所とか行動を探り当てるなんて、あの三田村峰子って人は何モンだっての(笑)

今すぐリサーチ会社作ってもやっていけるって

それに、それを精査して、こんな絶好の場所で襲撃の段取りも即セットしちゃうんだから、麻衣と真樹子さんもハンパねえや(苦笑)

そんな余分なこと頭に浮かべてたら、やって来たぜ…

私は右の脇道に停車中のワゴン車へと合図を送った

さあ、いらっしゃいだな…


...


ブブブーン…、キキキィー!

ブオーン、ブブッ、キキーン…

「テメー、危ねーじゃねーか‼」

わあ…、ワゴンのドライバーに詰め寄ったのは、あっこちゃんの方だわ

「こらー‼窓、降ろして謝れって!」

「あっこ、そっちはいいよ。…それより、周りを見な!」

おお…、矢吹さんは既に気付いてたようだな

もうメット外して指鳴らしてるし…

よし、こっちもツラ出すか…


...


「こんばんわ…」

「津波…」

「連日お疲れ様ですね。だが、お二人とも痛々しいカッコだな。…今夜は無理しないで、家に戻った方がいいんじゃないっすか?」

「ふざけんな‼このヤロー、勝手にドッグス連れてトンずらしやがって!これから南玉の集まりだって知ってるんだろーが。道開けろよ!」

南玉連合保守サイドの急先鋒、湯本敦子は既に頭から湯気をたててるわ

「そう言われても、ここを通せんぼするのは分かってるでしょう…」

「津波、本郷なんかの手先になって小賢しいマネせず、堂々と来いよ!」

南玉連合総長補佐、矢吹鷹美はもう臨戦態勢だった


...



「へへ…、最高だよ、あんたたちは。私だって、麻衣のど汚い権謀術策にはいつも文句言ってますよ。でもさ、ヤツの見据える場所には頷ける。そっちには恨みつらみなどないが、麻衣の進む道の同行者につき、お二人をすんなり通す訳にはいかないんだ」

「よし…、なら、あんたとは私がやってやる!あっこ…、他の連中は任せた。適当に蹴散らして先に行け!」

「わかった!」

さあ、ゴングは鳴ったぞ…