ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その6
ケイコ



「いきなりすべての勢力が一致団結ってのは、どうしても無理がある。去年の件では、それぞれに言い分はあるだろうしさ。ここは、個別での事前調整が不可欠だと思うんで、南玉離脱組と紅組、それに墨東会OBには、おけいがその窓口となる。そして、反南玉勢力、紅組離脱グループらには、北田久美がその折衝にあたってもらったらと考えてるんだが…。どうかな?」

「賛成ー!」

これも一斉に声が揃ったわ

と思ったところで…

「ちょっと、待ってほしいんだけど!」

その声の主は恵川いづみ先輩だった


...



「あのさ…。今の件、方法論としては異論ないし、横田の抜擢は適任だと思うよ。だけど、北田はダメだろが。一応、南玉復帰は認められたけど、後ろ足で砂をかけるように勝手に出て行って、こっちに弓を引いた人間じゃないか、北田は!そんなヤツに南玉を代表させて、折衝なんか任せられないって。違う?」

これは強烈だなあ…

まあ、言ってることは至極、真っ当だけどね

ああ…、久美は下向いてしょげちゃってる…


...


恵川先輩は、去年の再編劇では、木戸真澄先輩と共にその対応でみんなの批判が集中してたんだけど…

肩身の狭い思いでしょぼんとしてた木戸先輩とは対照的に、この人はその後も言いたいことはガンガンって感じだった(苦笑)

この春、荒子さんと一緒に引退した際、きっぱりOGの立場も去固辞した荒子さんの代わりに、OG代表として任に就いても、後輩には厳しかったわ

特に麻衣や久美へは、何かとガミガミ調で常に苦言を呈していたし

一方、多美のことは、傍目にもかわいがっていたのが伝わってきた

多美も1年の時から、恵川さんには懐いていたようなんだ

まあ、私としては、主だった先輩たちがみんないなくなっちゃったんで、いい悪いは別として、頼もしい存在ではあった

さて…、そんな恵川先輩の指摘をみんなはどう捉えるだろうか…