ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その11
祥子


「津波、新村…。機会があったら二人も、仲間に話してやって欲しいんだが、大打のようなNGなきワルは今後も現れる。ああいう輩はこれ以降も、決して消えることはないよ。これからの時代ずっとだ。オレはそう思う。いつの日か、”そいつら”は再び、広域暴力団との禁断の関係を以って、今回のように”外界”へと浸食してくる。十数年すれば、その完成形が我々の知らないところで出来上がってるだろう」

何とも衝撃的な予見だな

この男?が、こんなインテリっぽいってのは一見アンバランスだが、妙に説得力が伝わってくる

不思議だ…

...


「…それが果たしてその時代の社会や、今のオレ達みたいな若者に”なに”を及ぼすかはわからないよ。だけど、とてつもなく恐ろしい仕組みには違いない。そんな将来は防ぎようのない”連中”の企みをさ、この時代、ココの地の猛る女たちが決起して、男たちやその業界の然るべき人間まで動かした。そして、ついに最後の一線を越えさせなかった…。その象徴が、このジャッカル・ワンということさ。…これは後世の若者たちに伝承すべき、大きな出来事になるんだよ」

「バグジーさん…」

静美は目を潤ませていたよ

私も両腕に鳥肌が起っていたしね

そして私は大きく深呼吸してから、チェアーごと体をバグジー側に向けて宣言した

「バグジー、アンタの言うこと、よくわかった。仲間達には伝えていく。このことを。私たちが起こした行動の意義を…」

「ああ、頼む。みんなにもヨロシクな」

私と静美は再び握バグジーと握手を交わし、ジャッカルワンを去る大きな背中を見送った

しかし、このあと現実は、かくもシビアに私たちに悲しい知らせを突き付けることになるんだ

この日から約2か月半後…、季節が廻り木枯らし一号が吹き付ける高台広場で麻衣はたった一人、数人の男連中を相手に回し互いにナイフ手に戦い、この世を去った

いみじくもバグジーさんが予期してた、”麻衣は人を殺すか自分が殺される道を進んで生きていく”という、両方が的中したんだ

麻衣は敵の男…、おそらくはプロの殺し屋を含む麻衣の命を狙ってワナを仕掛けた連中数人を殺し、ヤツ自身もナイフで刺し殺された

さらにこの年が終わった最初の元旦未明には、おけいもバイク事故でアキラさんと一緒に20メートル近いがけ下へ転落してこの世を去ったよ

これだって、ほぼしかかるべき連中の罠による殺人だって!

言うまでもなく、私達は立ち上がれない程のショックに打ちひしがれたよ

しかし…、なぜか私達は表立って号泣したり、”敵”へのはやった感情を露わにはしなかった

それは、”当事者”の中でも極めてど真ん中にいた私にしても、どこか不思議な情景だったよ

何しろ、彼女たちの突然過ぎたが、仲間たち皆が心のどこか予期を孕んでいた3人の若すぎる絶命を、最期までピュアに”生き切った”到達点として対峙できたのかもしれない

そして私たちは、本郷麻衣と横田競子を”殉死”した共に戦った同志として、南玉連合の主催でその宣言を発することとしたんだ