ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その9
バグジー


津波め…、盛んに麻衣の身を按じてるわ

ならば、繰り返しになるが例の件にも触れておくか…

「津波…、新村には廃車プールで言ったんだが、たとえ大打が麻衣にもう向かってこないとしても、ヤツはこれからも人に殺されるか逆に人を殺す可能性は低くない。麻衣はそう言う生き方を変える気はないんだよ。さらさらな。だからさ…」

どうやら津波は、麻衣の内面性を察しているようだった

「静美からは聞いたよ。私からしたら、さっぱり理解できないが、まあ、あの麻衣ならそういうのもなあ…。わかってるよ、ヤツがいつ、そんな事態を起こしても不思議ではないとは私らも踏まえてるから…」

「何しろ、麻衣ってヤツは自ら危険を待ち望んでる、向かっていく…。そんな内面を自分でけしかけてるムキがある。これは誰にも止めようがないんだ」

オレの右に座ってる新村は、小刻みに頷いてる

ん…?

バッグから何か取り出すような素振りだな

...


「バグジーさん、あなたからスクラッププールで聞いたこの話、麻衣さんに北田久美を通して解説してもらったんです。それ、ここに書いてあります。読んでみます?」

「うん、拝見しよう」

静美からそのノートを受け取り、オレは麻衣の口述を起こした文面に目を通した

それは実に生々しい内容だったよ

麻衣…、お前…

「バグジーさん、私は麻衣さんが命のやり取りってその場面でも、おそらく平常心を持ち続けてるだろうって下り、ショックを受けました。17の少女がそんな感覚を持ち得るって…。私には信じられなくて…。だから麻衣さんのことは、私、凄いと…」

「新村、オレは仮に麻衣が殺すか殺されるかの局面に遭遇したらだ…、間違いなく平常心で臨むと思う。ヤツには逆上してそういうことなどは生じえないだろう。常識じゃあ考えずらいがな」

新村のヤツ、今度は大きく頷いて、とりあえず麻衣の感覚を自分なりに消化できたようだ

よかった…

オレは隣りの津波と顔を合わ、笑みを交わし合った


...


したら、すかさず津波が”次”に来たわ

「…ああ、それとさ、静美にはアンタもそう言う内面があるとかって言ってたらしいね。それって、どういうことだい?要は麻衣がよく口にする心の奥に住むもう一人の主だとかなんとか…、それと同じってことかい?」

「ちょっと違うんだが…。いずれにしても、そのもう一つの主ってな、オレの場合は女なんだ。内面のな」

「はー?アンタは男だろうが。なのに、内面に女がいるっての?」

津波はきょとんとして、ストレートに問いただしてきたよ(苦笑)

では、この二人にも告白しよう

...


「オレは性同一性障害を持ってるんだ。内面に女を抱えてる…」

「!!!」

案の定だ

しっかり二人とも固まってるよ

全く分かりやすい女達だな…(苦笑)