その22
狂気のシンパシーが投じたモノ①
本郷麻衣がジャカル・ニャンに乗り込んで5日後…。
東京郊外H市繁華街に佇む通称サラ金ビルの一室では、チーム大打のトップ4人が集まり、まさに激論が展開されていた…。
「…オレは反対ですよ!当面、本郷麻衣と直接コンタクトを持つのは、事前に皆で武次郎さん止まりと決めていた。ましてや、麻衣と撲殺人の婚約披露のセレモニーを直前に控え、やたらなリアクションはそれこそ、”先方”の格好の攻撃材料にされかねない。今のタイミングで、ノボルさんが麻衣に面と向かうのは避けるべきです!」
タカハシは渾身の思いで、チーム大打のモブスターズ仲間3人に熱弁していた。
その彼には、椎名も同調した。
「オレもタカハシの意見に賛同するな。少なくとも、ノボルさんが麻衣と接するのはヤツと撲殺さんの婚約披露後…、その影響度合いを精査、見極めした後にすべきですって。ここは極めて慎重な姿勢が欠かせない。そのことに尽きます!」
椎名はメリハリの利いた説得力たっぷりの口上を発した。
さらにタカハシが再度、発言する。
それは、大打ノボルの首を縦に振らせるダメ押しの勢いで。
「今一度思い起こしてほしい!…麻衣が武次郎さんにケンカを仕掛けたあの日、ジャッカル・ワンに出張っていた御手洗は、実際、女子高生が主力の南玉連合におちょくられて帰されてるんですよ!」
これは明らかに事実以外の何物でもなかったし、ここに顔を連ねるモブスターズたちには言を待たない周知の共通認識であった。
「…奴ら、南玉連合はですよ…、今は亡き都県境の大立者だった黒原盛弘の傘下にあった墨東会や砂垣グループを含めた男勢力もそのフレーム内に取り込んでて、しっかりと連携が取れていたんです。その場を仕切っていた、バグジーとタイマン勝負で分けた津波祥子は、それこそ御手洗にも全く臆せずだったと。津波をヒットする雇われを同行してたんですよ、その御手洗は!」
そして間髪を入れず、椎名が続いた。
「うん…。要は、都県境のガキ勢力は南玉の猛る女どもが背骨を成し、墨東やあの砂垣グループ、それに他ならぬバグジーをもその輪に組み込んでの今回ってことだしな」
椎名のこの指摘もまた然りで、事実そのまんまであった。
「…あの日、我々は御手洗に、本郷麻衣と水面下でツルんでるのは確実だった南玉の現総長である津波へ”カマかけ”を指示しました。ところがだったんだ。麻衣が武次郎とのドンパチには至らなかったことは承知だったはずの津波は、その挑発に乗れない…、そのことこそ南玉サイドと麻衣…、さらに東龍会の敵である相和会とつながっている証左と踏みたかったからですよね?」
これには、一同が無言で頷いた。
「ここでも、ところが…、だった。ジャッカル・ワンに集結した仲間連中に津波は御手洗隊を排除させた。御手洗が言うにはですよ…、あそこで引かなかったら津波はマジで”やる気”だったと明言している。それどころか、相和会が課していないショバ代を要求するヤクザは追っ払うと宣言だ!そうなればコトは明快ですよ。都県境に根を張るガキ連中との対峙は、表面上では結託していないという土俵上での、相和会との対峙となるんです‼」
椎名は額に汗を滴らせながらの熱弁だった。
「ノボルさん…。今、指摘したことは重要です。決してスルー出来ない!…麻衣はあくまで相和会の幹部と婚約する立場は示してるが、相和会内部の立場に立っていないと主張してるんだ。一方で、南玉連合サイドのカタギ連中とも無関係でってことで、我々にケンカを売ってきてるんです。白々しくもです!この意味するところは、我々の出方次第で、どうにもスタンスは変わるよってメッセージが見え見えだ。いうまでもなく、この点は相和会も麻衣を通じて共闘体制を敷いてる…。すなわち、こっちの対応を誤れば関東直系有力組織である東龍会が、極道界の一匹オオカミ、相馬豹一亡き後の新生相和会にアキレス筋を鷲掴みにされるリスクを晒してるってこってすよ。であれば、麻衣の婚約セレモニー前の接近遭遇は危険すぎる!違いますか、ノボルさん⁉」
このタカハシこと、三貫野ミチロウの全霊を託した訴えに対する”NGなきワル”大打ノボルのアンサーは、まさにその後の彼自身と本郷麻衣の運命を決する分岐点を付すものとなる…。
狂気のシンパシーが投じたモノ①
本郷麻衣がジャカル・ニャンに乗り込んで5日後…。
東京郊外H市繁華街に佇む通称サラ金ビルの一室では、チーム大打のトップ4人が集まり、まさに激論が展開されていた…。
「…オレは反対ですよ!当面、本郷麻衣と直接コンタクトを持つのは、事前に皆で武次郎さん止まりと決めていた。ましてや、麻衣と撲殺人の婚約披露のセレモニーを直前に控え、やたらなリアクションはそれこそ、”先方”の格好の攻撃材料にされかねない。今のタイミングで、ノボルさんが麻衣に面と向かうのは避けるべきです!」
タカハシは渾身の思いで、チーム大打のモブスターズ仲間3人に熱弁していた。
その彼には、椎名も同調した。
「オレもタカハシの意見に賛同するな。少なくとも、ノボルさんが麻衣と接するのはヤツと撲殺さんの婚約披露後…、その影響度合いを精査、見極めした後にすべきですって。ここは極めて慎重な姿勢が欠かせない。そのことに尽きます!」
椎名はメリハリの利いた説得力たっぷりの口上を発した。
さらにタカハシが再度、発言する。
それは、大打ノボルの首を縦に振らせるダメ押しの勢いで。
「今一度思い起こしてほしい!…麻衣が武次郎さんにケンカを仕掛けたあの日、ジャッカル・ワンに出張っていた御手洗は、実際、女子高生が主力の南玉連合におちょくられて帰されてるんですよ!」
これは明らかに事実以外の何物でもなかったし、ここに顔を連ねるモブスターズたちには言を待たない周知の共通認識であった。
「…奴ら、南玉連合はですよ…、今は亡き都県境の大立者だった黒原盛弘の傘下にあった墨東会や砂垣グループを含めた男勢力もそのフレーム内に取り込んでて、しっかりと連携が取れていたんです。その場を仕切っていた、バグジーとタイマン勝負で分けた津波祥子は、それこそ御手洗にも全く臆せずだったと。津波をヒットする雇われを同行してたんですよ、その御手洗は!」
そして間髪を入れず、椎名が続いた。
「うん…。要は、都県境のガキ勢力は南玉の猛る女どもが背骨を成し、墨東やあの砂垣グループ、それに他ならぬバグジーをもその輪に組み込んでの今回ってことだしな」
椎名のこの指摘もまた然りで、事実そのまんまであった。
「…あの日、我々は御手洗に、本郷麻衣と水面下でツルんでるのは確実だった南玉の現総長である津波へ”カマかけ”を指示しました。ところがだったんだ。麻衣が武次郎とのドンパチには至らなかったことは承知だったはずの津波は、その挑発に乗れない…、そのことこそ南玉サイドと麻衣…、さらに東龍会の敵である相和会とつながっている証左と踏みたかったからですよね?」
これには、一同が無言で頷いた。
「ここでも、ところが…、だった。ジャッカル・ワンに集結した仲間連中に津波は御手洗隊を排除させた。御手洗が言うにはですよ…、あそこで引かなかったら津波はマジで”やる気”だったと明言している。それどころか、相和会が課していないショバ代を要求するヤクザは追っ払うと宣言だ!そうなればコトは明快ですよ。都県境に根を張るガキ連中との対峙は、表面上では結託していないという土俵上での、相和会との対峙となるんです‼」
椎名は額に汗を滴らせながらの熱弁だった。
「ノボルさん…。今、指摘したことは重要です。決してスルー出来ない!…麻衣はあくまで相和会の幹部と婚約する立場は示してるが、相和会内部の立場に立っていないと主張してるんだ。一方で、南玉連合サイドのカタギ連中とも無関係でってことで、我々にケンカを売ってきてるんです。白々しくもです!この意味するところは、我々の出方次第で、どうにもスタンスは変わるよってメッセージが見え見えだ。いうまでもなく、この点は相和会も麻衣を通じて共闘体制を敷いてる…。すなわち、こっちの対応を誤れば関東直系有力組織である東龍会が、極道界の一匹オオカミ、相馬豹一亡き後の新生相和会にアキレス筋を鷲掴みにされるリスクを晒してるってこってすよ。であれば、麻衣の婚約セレモニー前の接近遭遇は危険すぎる!違いますか、ノボルさん⁉」
このタカハシこと、三貫野ミチロウの全霊を託した訴えに対する”NGなきワル”大打ノボルのアンサーは、まさにその後の彼自身と本郷麻衣の運命を決する分岐点を付すものとなる…。



