その10
祥子
「…いいか、静美。麻衣のアクション…、そしてそれを受けた敵側のリアクションは即、こっちに跳ね返ってくる。そん中で、一番先に波が押し寄せるのはこのジャッカル・ワンだ。仮に今、麻衣の宣戦布告で敵さんが動けば、ここの連中が即動く。それを、真向から受けて立つのが私らだ。いいな!」
「はい…。自分はもう、臨戦態勢ですから…」
いやあ…、隣のチェアでコイツ、貧乏ゆすりしながら額に汗滲ませてるよ
力みすぎだが、これも性格だよな(苦笑)
「…で、自分の目利きでは先ほどから二人増えて、店内の敵さんは3組、7人じゃないかと…。どうですか?」
「ああ、私もそう見てる。んでさ、主軸はスロット脇の喫煙コーナーでダベってる3人だろうな」
「やはりそうなりますよね。リーダー格は左端のスキンヘッドですかね?」
「いや…、ヤツは雇われだろう。10メーター以上離れていても、その手の肌感がプンプン臭ってくるよ(苦笑)。で…、おそらく、この場の”責任者”というか大打一派の窓口は、真ん中でうんこ座りしてさっきからタバコスパスパしてる巨漢の男だろう」
「じゃあ、ヤツが大打の弟ですか⁉」
「大打の弟、武次郎はたぶん、麻衣が乗り込んだジャッカル・ニャンに張り付いてると思う。あそこの巨漢は九州弁を話してるし…、この界隈で何度も発見情報が寄せられてる”例の男”と同一人物かもな。であれば…、ヤツは十中八九、御手洗とかっていうチーム大打の幹部格じゃねーかな」
「あの男が…⁉でも、三田村さんからの情報だと、御手洗はチーム大打を支える最高幹部以外の男って聞いてますが…」
「そういうことさ、静美…。その名の通り、奴らは完璧にチームとして行動してるんだ。今この瞬間も、ヤツの上にいる他の幹部格は私らとの対峙でノンストップさ。しかも、トップに就く大打ノボルは、戦後日本の裏社会を牛耳ってきた広域ヤクザの大物組長とタッグを組むことをも厭わない”NGなきワル"と呼ばれる冷徹な男らしいしな。…そんなハンパない野郎が仕切ってるチームとなれば、その末端メンバーさえ、鉄の統率下にあるだろうよ」
私は既に眉間にしわを寄せてる静美に、まるまるホンネをぶつけた
したら、静美のヤツ、隣の私に向かって、さらに前のめりになって然もありなんの返答をぶつけてきたわ(苦笑)
「あの…!私たちは寄せ集めなんかじゃあ、ありませんよ‼ここまでさんざん皆で苦労して、ぶつかり合って、必死になって相互努力の末…、やっと固まれたんじゃないですか‼今のウチらは決して、寄せ集めなんかじゃあ…」
「静美…」
「…その証拠に、長年の仇敵だった砂垣さんもこちらの輪に加わってくれたし、バグジーさんみたいな強力な助っ人も得たんですよ!その大きなカタマリを束ねるリーダーだって、バグジーさんに負けなかった祥子さんなんです‼それに、私らの枠外では麻衣さんも共闘してくれてて…。黒原さんが束ねていた墨東会をはじめとする男組織だって、こっちサイドについてくれてるんですから…。もう、奴らを圧倒してますって‼」
静美にしては珍しく、顔を紅潮させ、高角砲まで飛ばしてこの言だったよ
ふう…、全く頼もしくなったもんだわ
...
「まあ、そう力むなって。お前の言うことは全部、理解してるからさ。ただ、私の立場では、油断は禁物ってこと。あくまで身を律し続けてないとな。だろ?」
「はい…、そうですよね。すいません、生意気言って…」
「いずれにせよ、もうすぐだ。麻衣の首尾は現場近くで待機してる麻衣の護衛陣とこっちの偵察から即座に入る。その結果でな…」
私はニコッと笑顔でそう言ってね
「わかりました…」
一方、静美の方は、相変わらずカタい表情でこう返してきたが(笑)
で…、その直後、カウンター内の厨房で作業していたマスターから声がかかった
「祥子ちゃん、なつきちゃんからだよ!」
来た…!
日高なつきから連絡か‼
マスターは手拭いで握っていた受話器を、カウンター越しで私に正面から突き付けるように渡してくれた
「マスター、すいません!…ああ、なつきか?津波だ!」
「祥子さん‼門前中通りで大打一派とみられるガラ悪の連中を張っていたんですが、たった今、奴ら引き上げました…。他の3ポイントも”一斉”らしいっす!」
「そうか…。こっちは今のところ7人様ご一行で、まだアクションはない。何かあればベッツの真樹子さんに入れる。お前もこの一報はすぐ、真樹子さんにな」
「了解です!祥子さんも頑張ってください‼なにしろ、麻衣さんが動けば、ジャッカル・ワンが最前線ですから…」
「ああ…、わかってる。ココは私と静美に任せとけ」
私は用件のみでなつきからの電話を切った
その間…、奴らも喫煙コーナー脇にある公衆電話で何やら数回の電話連絡をしていたわ
それと並行して…、他の2組4人もスロットルの喫煙コーナーへと移動して7人は合流したわ
うん…、睨んだ通りだ
で…、御手洗と思われる男を取り囲むようにして、何やらコソコソ話だわ
「祥子さん…‼なつきは何て言ってきたんです⁉」
静美は既にカウンターチェアから立ち上がって、連中と私に何度も顔を交互させながら、なつきからの一報をせっついてる
「静美!門前仲通りと他の監視ポイントからは、敵さんが引き上げたそうだ。たった今な。それで、ここに出向いてる連中も、これから何らかのアクションに出るだろう。店内4人のこっちサイドのメンバーへは今、目配りさせたから…。お前は外の3人に伝えろ。で、後方待機の墨東会と片桐さんの部隊にもこっちへ向かってくれるよう手配をしろ。いいか、冷静にな…」
「わかりました…」
静美はそう言って、カウンターから店外へすっ飛んでいった
その直後…
早くも連中が”行動”に出た!
祥子
「…いいか、静美。麻衣のアクション…、そしてそれを受けた敵側のリアクションは即、こっちに跳ね返ってくる。そん中で、一番先に波が押し寄せるのはこのジャッカル・ワンだ。仮に今、麻衣の宣戦布告で敵さんが動けば、ここの連中が即動く。それを、真向から受けて立つのが私らだ。いいな!」
「はい…。自分はもう、臨戦態勢ですから…」
いやあ…、隣のチェアでコイツ、貧乏ゆすりしながら額に汗滲ませてるよ
力みすぎだが、これも性格だよな(苦笑)
「…で、自分の目利きでは先ほどから二人増えて、店内の敵さんは3組、7人じゃないかと…。どうですか?」
「ああ、私もそう見てる。んでさ、主軸はスロット脇の喫煙コーナーでダベってる3人だろうな」
「やはりそうなりますよね。リーダー格は左端のスキンヘッドですかね?」
「いや…、ヤツは雇われだろう。10メーター以上離れていても、その手の肌感がプンプン臭ってくるよ(苦笑)。で…、おそらく、この場の”責任者”というか大打一派の窓口は、真ん中でうんこ座りしてさっきからタバコスパスパしてる巨漢の男だろう」
「じゃあ、ヤツが大打の弟ですか⁉」
「大打の弟、武次郎はたぶん、麻衣が乗り込んだジャッカル・ニャンに張り付いてると思う。あそこの巨漢は九州弁を話してるし…、この界隈で何度も発見情報が寄せられてる”例の男”と同一人物かもな。であれば…、ヤツは十中八九、御手洗とかっていうチーム大打の幹部格じゃねーかな」
「あの男が…⁉でも、三田村さんからの情報だと、御手洗はチーム大打を支える最高幹部以外の男って聞いてますが…」
「そういうことさ、静美…。その名の通り、奴らは完璧にチームとして行動してるんだ。今この瞬間も、ヤツの上にいる他の幹部格は私らとの対峙でノンストップさ。しかも、トップに就く大打ノボルは、戦後日本の裏社会を牛耳ってきた広域ヤクザの大物組長とタッグを組むことをも厭わない”NGなきワル"と呼ばれる冷徹な男らしいしな。…そんなハンパない野郎が仕切ってるチームとなれば、その末端メンバーさえ、鉄の統率下にあるだろうよ」
私は既に眉間にしわを寄せてる静美に、まるまるホンネをぶつけた
したら、静美のヤツ、隣の私に向かって、さらに前のめりになって然もありなんの返答をぶつけてきたわ(苦笑)
「あの…!私たちは寄せ集めなんかじゃあ、ありませんよ‼ここまでさんざん皆で苦労して、ぶつかり合って、必死になって相互努力の末…、やっと固まれたんじゃないですか‼今のウチらは決して、寄せ集めなんかじゃあ…」
「静美…」
「…その証拠に、長年の仇敵だった砂垣さんもこちらの輪に加わってくれたし、バグジーさんみたいな強力な助っ人も得たんですよ!その大きなカタマリを束ねるリーダーだって、バグジーさんに負けなかった祥子さんなんです‼それに、私らの枠外では麻衣さんも共闘してくれてて…。黒原さんが束ねていた墨東会をはじめとする男組織だって、こっちサイドについてくれてるんですから…。もう、奴らを圧倒してますって‼」
静美にしては珍しく、顔を紅潮させ、高角砲まで飛ばしてこの言だったよ
ふう…、全く頼もしくなったもんだわ
...
「まあ、そう力むなって。お前の言うことは全部、理解してるからさ。ただ、私の立場では、油断は禁物ってこと。あくまで身を律し続けてないとな。だろ?」
「はい…、そうですよね。すいません、生意気言って…」
「いずれにせよ、もうすぐだ。麻衣の首尾は現場近くで待機してる麻衣の護衛陣とこっちの偵察から即座に入る。その結果でな…」
私はニコッと笑顔でそう言ってね
「わかりました…」
一方、静美の方は、相変わらずカタい表情でこう返してきたが(笑)
で…、その直後、カウンター内の厨房で作業していたマスターから声がかかった
「祥子ちゃん、なつきちゃんからだよ!」
来た…!
日高なつきから連絡か‼
マスターは手拭いで握っていた受話器を、カウンター越しで私に正面から突き付けるように渡してくれた
「マスター、すいません!…ああ、なつきか?津波だ!」
「祥子さん‼門前中通りで大打一派とみられるガラ悪の連中を張っていたんですが、たった今、奴ら引き上げました…。他の3ポイントも”一斉”らしいっす!」
「そうか…。こっちは今のところ7人様ご一行で、まだアクションはない。何かあればベッツの真樹子さんに入れる。お前もこの一報はすぐ、真樹子さんにな」
「了解です!祥子さんも頑張ってください‼なにしろ、麻衣さんが動けば、ジャッカル・ワンが最前線ですから…」
「ああ…、わかってる。ココは私と静美に任せとけ」
私は用件のみでなつきからの電話を切った
その間…、奴らも喫煙コーナー脇にある公衆電話で何やら数回の電話連絡をしていたわ
それと並行して…、他の2組4人もスロットルの喫煙コーナーへと移動して7人は合流したわ
うん…、睨んだ通りだ
で…、御手洗と思われる男を取り囲むようにして、何やらコソコソ話だわ
「祥子さん…‼なつきは何て言ってきたんです⁉」
静美は既にカウンターチェアから立ち上がって、連中と私に何度も顔を交互させながら、なつきからの一報をせっついてる
「静美!門前仲通りと他の監視ポイントからは、敵さんが引き上げたそうだ。たった今な。それで、ここに出向いてる連中も、これから何らかのアクションに出るだろう。店内4人のこっちサイドのメンバーへは今、目配りさせたから…。お前は外の3人に伝えろ。で、後方待機の墨東会と片桐さんの部隊にもこっちへ向かってくれるよう手配をしろ。いいか、冷静にな…」
「わかりました…」
静美はそう言って、カウンターから店外へすっ飛んでいった
その直後…
早くも連中が”行動”に出た!



