ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その6
麻衣



今日はちょっと肌寒いかな…

まあ、”行動開始”となれば、体なんかはすぐ温まるわ

「…麻衣さん、こんなポンコツでよかったんっすかね?」

「うん、なにしろデカい車ってのが肝心なのよ。ポンコツだろうが何だろうが…。一応、走るし」

とは言ったが…

このワゴン車、ここまでポンコツとはね…(苦笑)


...



時速30キロのポンコツ車に揺られ、なんとか着いたわ

大型プールバーを備えた、総合娯楽施設ジャッカルニャン…

おお、さすがオープンだけに、車けっこう停まってんな…

ええと…、ナンバーは5648だったよな

「麻衣さん…、”あれ”じゃないかな?」

おお…!

あれだわ、確かに…

「よし、2台おいたアソコに3台分空いてるから、停めちゃって。言った通りにね…」

「了解…」

ほえー…、道也、車の車庫入れも器用なもんだなあ…

このスペースでこのデカイ車の横付け、切り替えし2回で入れちゃった


...



「…これで、いいっすか?もうちょっと、まっすぐに寄せましょうかね?」

「ううん、かえってこのくらいの方がちょうどいいよ。…じゃあ、段取とおりね」

「OKですよ…」

私は助手席を降り、本日の”携帯グッズ一式”を、ポケットの上からひと通り確認した

そして、思いっきり腕を真上に伸ばし、大きく深呼吸をね…

よし…、さあ来い!


...


で…、私ら二人が新規オープンしたこの店の駐車場にムチャ止めした車を降りると、店の入り口に向かって歩く人は案の定、皆こっちをジロジロだわ…

「なによ、あの車…⁉なんて停め方してるのかしら…」

「全く‼…なんなんだ、あの停め方は!最近はマナーのかけらもない奴が平気で運転してる…」

まあ、みんなそう言うわな(笑)

誰でもいいから、早く店の人間にチクってね~~

私はうんこ座りで、頬を両手で支えながら、迷惑駐車のポンコツワゴン横で”それ”を待った

んで、待つこと約2分…

来たぞー‼

「…ちょっと!お客さん、困りますね~。こんな車の停め方されたんじゃ。さあ、他のお客さんの迷惑ですから、きちっと縦に停めてください」

店の中から小走りでやってきたのは若い男二人

一見で、”奴ら”の関連だと分かった

よっしゃ、なら、かかるぞ!


...



「いやですね。このまま止めさせてもらうわ」

「はあ…?あのねー、そんなの通用すると思ってんの、あんた。もう一度言うよ。ちゃんとラインに従って、停めなおして、く・だ・さ・い‼」

「やだよー」

「おい‼…ああ、アンタ、ちゃんと停めてくれ。この彼女、訳わかんないこと言ってんで、さあ…」

「僕はちゃんと停めたいんですけどね…、ダメなんです」

「あー?なんでだ⁉」

「彼女がいやだって言ってるんで。ああ、この彼女…、とても凶暴で恐いんですよ。だから僕、逆らえないんです。殺されちゃいますから、勝手なコトすると…」

キャハハハ…、道也、意外と演技派じゃん


...



「てめーら、ふざけんな‼」

ほー、早くもこいつら、正体現したかな?

「おお、いい加減にしろよ、お前らよう!…おとなしくしてりゃいい気になって。さっさと、このポンコツ、停めなおせ!」

「やだよーだ!」

この時点では、私は腰を上げて、さかんに体のあちこちを動かしていた

「この野郎!…おい、武次郎さんを呼んで来い…」

「おお…」

ここで細身の、耳にピアスした男の方が、私の服を掴むと凄んできたわ

もう一人の、メガネかけたちょび髭の男は店に向かってかっ飛んでった

はは…、周りは何事かと、店に向かう客もここを遠巻きにしてみんな見てるし

いい感じだ…



...



「麻衣さん、アレ、そうですよ‼」

運転席の窓から首を外に伸ばし、道也は”当面のターゲット”がこっちへ駆けてくるのを教えてくれた

わあ、聞いてた通り、けっこうなデブじゃん

「武次郎さん、こいつらです!」

武次郎と呼ばれたデブは、店からもう一人連れてきて、合計4人、いや4匹だ

「あんたら、こんな車の停め方、許されるわけないでしょ?3台停まるところ、横に停めて占領しちゃってんだから。さあ、ちゃんと停めなおしてもらいますよ。いいですね?」

うん…、確かに大打ノボルの弟だけに、けっこうな威圧感だわ

なら、私としても今日はフルエンジンで行ってやる!

「何回言わせんのよ、さっきから!いやだって言ってんだ、こっちはよー‼」

私はデブの真正面に立って、馬鹿でかい声で怒鳴ってやった

もう、店内から客が何人か出てきて、こっちに釘付けだよ

さすがに男4匹、店の方を振りかえり、気にかけている様子だ


...



「よし、お前ら…!中入って話そう。二人とも、来な!」

さあ、デブが顔色を微妙に変えて、”お誘い”をかけてくれたぞ

私は道也に目で合図をして、男たちの後ろについて行った

その後、道也が車を降り、すぐに走って私の背中に追いついた

ジャッカル・ニャン…

フン…、祥子御用達のジャッカルワンをコケにしやがって!

店に入る前、頭上のでっかい看板を見上げてね…

ついに、敵陣突入となったぞ