その2
祥子


そして…、だったわ

ここで、私らの大きなカタマリに立ちはだかってきたのが、日本を代表するヤクザと裏で交尾を交わした大打グループだ

奴らは、ずっと私の心の置き場であった愛すべきプールパー、ジャッカル・ワンに対抗して、バックの広域ヤクザ関連企業が取得していた店舗を改装し、図々しくも”ジャッカル・ニャン”ってふざけたネーミングの総合娯楽施設をオープンさせやがってよう!

かねてより、ジャッカル・ワンに乗り込んで、えげつない嫌がらせ行為で客を奪っていってさ

ここで単純な私は、同郷であるジャッカル・ワンのオーナーの心情を察し、一気に行ってやろうとも思ったが…

やはり今の私は、過去散々にぶつかり合った末、胸襟を開き合い手を携えた多くの仲間、同志との大道があるからね

で…、私らは今や極道の妻となる麻衣とも真樹子さんと北田久美、そして砂垣さんを経由した複数回線で連携をとった上、しっかり対”NGなきワル”軍団の戦略を練ったよ

ふふ…、結局その作戦はさ、麻衣の建策構想をそのままなぞる形で詰められてね

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つまり…、私ら都県境界隈を先導する主力部隊は、あくまで表面上、麻衣とは一線を画して共闘路線を敷く

ハハハ…、実は麻衣とはがっちり手を結んでるんだけどね

要は、策略家の麻衣のヤロウが描く絵図は、またまた仰天の原爆級シナリオだったってこと!

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ヤツ…、今回は大打のパートナーである東龍会、さらにはその”子会社”星流会と対立構図にある相馬豹一亡き後の新生相和会の遣われではないが、一方で相和会幹部倉橋さんの婚約者という、なんともファジーな立場で大打陣営へ正面から殴り込む計画を練っていたんだ

当然、私らとは密な関係にあることを、先方は周知してるが、こっちサイドはその繋がりを表向きでは完全に切ってってことにしてさ

この辺りは麻衣も真樹子さんや三田村さんからもしっかり意見を聞いた上で、最終決断に至ったようだが…

うーん…、敵陣からしたらなんとも掴みどころを失した麻衣のアタックってことになるよな

なにしろ、大打と東龍会からしたら、麻衣の宣戦布告に対しては、相和会と星流会の業界内における代理戦争なのかガキ界隈の前段対立というフレームにはまるのか、はなはだ判断に難いアプローチだけに、麻衣の一撃に対するその出方は極めてデリケートな範疇に陥ってるだろうさ

へへ、この麻衣戦略の肝は別にあってね

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アイツのピン行動に連動して、こっちの守る本拠たるジャッカル・ワンには私ら南玉連合を軸とした女たちの布陣をローテーションで常在させてるんだ

この役回りは私が責任者として、自ら指揮を執って事実上24時間体制で実質警備に当たっている

んで、ジャッカル・ワンに侵攻してる大打グループが何か仕掛けてきたら、堂々と都県境の界隈を預かる南玉連合とその同志たちって立場で、奴らと対峙さ

仮にそこで火種が上がり、元ネタを掌握できれば私らからその詳細は即、麻衣に渡る

ふふ…、それを得た麻衣はそのネタ…、つまり大打らの悪企みの素を握ってその都度奴らの本陣…、ジャッカル・ニャンに乗り込むって寸法さ

いやあ…、さすがに極激のイカレ娘だわ、麻衣って女は!

この攻め手でじりじり大打に迫れば、時期にバックの東龍会が顔を覗かせる可能性が大って目利きでね

そもそも、そこが麻衣と相和会の招き寄せたい狙いどころなんだろうだからね

って訳で、私らと麻衣の対NGなきワル連中との対決は、その背景がこの国を裏で牛耳る広域やくざ業界のパワーゲームともボーダーレスになっちまったってことだよ

そして…

麻衣はその第一撃を加えるべき、ジャッカル・ニャンオープンの翌日、その敵陣ド真ん中へ突入していったわ