その1
祥子


始まった…!

それは極めて水面下の激震を経て

その震源もとは、今や相和会の幹部である”撲殺男”と婚約関係に至り、極道社会では周知の少女となった相馬豹子こと本郷麻衣…

そして今、その麻衣とガチンコで火花を散らしてるのが、”NGなきワル”こと大打ノボル兄弟な訳だわ

この横浜産クソ兄弟は、裏世界で日本という国を関西と共に二分する関東広域暴○団の中核を成す直系有力組織、東龍会のトップ坂内と時代を先取りしたパートナーシップを交わしてるってことだ!

で…、こやつらは、長く関西と関東の二大広域ヤクザ連合を向こうに回し、ここ東京埼玉県境でその傘下に下ることなく、やりたいようにやってきた日本極道界の問題児相馬豹一率いる相和会駆逐とリンクさせた東龍会の野望に乗っかり、ウチらのガキ社会にその汚い手を突っ込んできた

これに対して、昨年と今年の夏、二度の再編闘争を軸とした我々猛る女たちは、この地の男組織をも巻き込んで奇跡たる連帯を結実させた

その表向きの対立軸は、猛る女台頭をけん制する排赤勢力のシンボルだった訳だわ

んで、その勢力を常に先頭を切って牽引してきた、砂垣一派との頂上対決で雌雄を決することになってね

...


言うまでもなく砂垣順二という男は、東龍会の下部組織でこの都県境では縄張りが重なり合って利害関係を抱えていた相和会と戦後ずっと敵対関係にあった星流会の諸星会長からも庇護を受けてきた

つまりは…、紅丸さんをはじめとした歴代のウチら猛る女たちと向きあってきた宿縁の男だよ

言うなれば、ミスター排赤だわ

実際はヘタレ風見鶏ってところだけどね(苦笑)

んなんだけど…!

...


ヤツはここで、星流会から借り受けたフリーランサーの刺客、バグジーを立て、南玉連合を中心とした都県境の反排赤勢力に最終決着を前面に掲げてケンカを売ってきたんだよ

まあ、私らからしたら、これって…⁉

ってことだった訳!

だが、そのケンカを正面から受けて立った我々サイドでは、まだ昨年の再編局面で清算しきれなかった各々の確執…、根深い恩讐を抱えていたんだよね

でもよう…、ここで、南玉連合の直近リーダー格の一角を務めた横田競子の驚異的なピュアアプローチで、その深く分厚かった恩讐というハードルを乗り越えることができてね…

かくて、この地で宿縁関係を成してきた排赤×反排赤の最終決戦は、砂垣一派がその命運を託した、握力100調の化け物たる雇われヒットマン、バグジーこと柴崎典男と反排赤勢力を代表した私が決着を着けることとなった…

...


私は必死に戦ったよ

仲間とともにね

そこには赤と黒とか、男と女とか…、それらのこだわりという灰汁は消え去っていたわ

あったのは、沸き立つような熱い信条と信念と義務感、責任感…

気が付いたら、私などではとても敵う相手ではないはずの、ほぼプロの喧嘩屋である屈強な男(内面はオンナ…!信じられないが…)と痛み分けに持ち込んでいたわ

その結果…、砂垣一派とは包括的な協調関係を構築できてね

要は、我ら南玉連合を背骨とする東京埼玉県境を事実上仕切る勢力は、旧来から沸々と滾り蒸してきた熱き男と女の総結集を見たに等しかった

その対外的トップは、せん越ながら私…、津波祥子が担うことになってさ…

内心、参ったなあ…ってね(苦笑)

でも、”時”はカンペキに訪れていたよ

サイはもう振り下ろされてってたことだったわ…