ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その57
バグジー



うん…、ややしんどいが、ダンベルの感触、最高だな

それにしても津波祥子との戦いは、ハードかつコアを極めるものだった

あの戦いの最中、私は意識朦朧となったが、なぜか言い知れぬエクスタシーに浸っていた気がする

それは、かつて味わったことのない爽快感にも酷似していた

所詮、金で雇われた”仕事”だというのに…


...



とにかく、あれから2日ほどは体中が痛くて、ロクに眠れなかったが…

聞いたところ、津波は私との戦いの翌日には、仲間たちと今後の協議を行ったらしい

アイツだって、その夜は寝床でのたうち回って、全身の痛みと戦っていたはずだ

なのにな…、なんとタフな心身なんだ

”ここ”の女には、どこまでも驚かされる


...



これほどまでに若い女が躍動し、何ものにもとらわれず疾走できる、この地に培われた土壌…

その奇跡の地が今、”奴ら”にけがされようとしている

そのことに”みんな”も気づき、危機感を共有し、”奴ら”を迎え撃つ決意を持ってくれた…

だが…、あの”敵”を阻止するには、彼女たちと砂垣らだけでは無理だ

”奴ら”に正面から立ち向える人間は、現状では本郷麻衣しかいない

そして、私があの子を守らなくては…

何としても…

元の雇い主と構えるのは本意ではないが、私はこの地の女たちに魅了された

彼女らの放つ、あの輝きを失わせてはならない…

...


翌日…

「お~~!バグちゃん…、こんちわ。いやー、聞いたわ。祥子とは気を失うまで戦ったんだってね。お疲れさんでした、はは…」

どうも、こいつにはいつも調子を狂わされる

「でもさー、なんで”ここ”な訳?私とは、喫茶店でお茶とかじゃないの、なにゆえさ?」

「”ここ”がよかったんだ。お前と”今日の話”をするにはな…。私は参拝を済ませた。お前もせっかくだから祈願して来い。危険な戦いになるんだからな、これからの敵とは…」

「そうね。まあ、しっかり頼むぞって、気合い入れてくるわ」

なんだ、コイツ、神様に向かって!

バチ当たりなヤツだ…



...



「…お待たせ。ああ、そこの石段に座って話そうよ」

麻衣と私は、最上段の石段に並んで腰を下ろした

軽く50段はある、傾斜のきつい長い石段を見下ろすと、何とも勇壮だ

ここからの眺めもいい

風もなく秋晴れもあってか、心が洗われるな

”ここ”の発する気脈は特異だ

境内を覆う杉やクヌギの木々は、まるで目を見開き、深く息吹いているようだ

ここの気は蒸溜を巡らせ、人の深淵に入り込んでいく

おそらく感性が研ぎ澄まされれば、眠っているか、否定し続けている、自分の中の深い領域を刺衝されることだろう

コイツ、ひょっとして…

そこのことを感受していて、”こんな”態度なのか?