「誰か、助けて!!」

誰かに聞こえるくらい大きな声を振り絞り、亡者のごとく助けを求めた。

その声が届いたのか、囚人が声を上げてその場に倒れる。

「大丈夫か!!」

顔色を変えてやってきたジョナサンが、囚人に小さな電撃棒で攻撃したようだ。

それから囚人はびくともしない。

ただ下敷きになった僕は彼の体重が重すぎて、身動きが取れない。


「お前も逃げろ!どこでもいい!すぐここから去るんだ!!」

「先輩助けてください!重いんですけど……」

「自分で脱出してくれ!時間がない!」


青ざめた血相のまま低めの叫び声をあげると、ジョナサンは僕の表情を見ることなく更衣室から出て行ってしまった。



(何が起こっているんだ……)



上に覆いかぶさっている囚人をなんとか自力でどかして、僕は疑問を持ちながら看守服に着替え外へ出た。

見るとたくさんの看守が囚人に潰されており、廊下に血溜まりと看守の山ができている。


(ま、まずい……)

急いで更衣室に戻ろうとしたら、一人の細長い体の男が襲い掛かってきた。

手には木の棒のようなものを握っている。

「きぇぇぇぇ!!」

意味不明な叫び声と共に潰されそうなところ、近くにいた黒髪の年老いた看守がそいつの右膝に鉄棒のようなもので攻撃した。

そいつは横に少しよろめき、態勢を崩す。


「大丈夫か!怪我はないか!」

「あ、はい!!」



少しばかり灯りが見えたものの、看守が切羽詰まった表情をしているので油断は禁物。

これ以上攻撃されないようにしなければ、自分の身と柔な精神は持たない。

ましてや更衣室へ向かっていた看守は全員殺されていたのだから、この世界で生存できるのか全くもって不明である。

(ここで殺されちゃダメだ!戦わないで逃げよう)

拳を握りしめて、歯軋りした。