少し考えてから、焦って言葉を発する。


「僕はヘリかな?燃料不足を解消するには、燃料足せばいいだけだし」

「よし、決まり。覚悟はいいか?」

「うん」


微笑んで頷く。

相手の表情は、相変わらず全く変わらない。

ときめくこととかないのかよ。


「あ、一つ聞いていい?履歴書とカードはどこへやったの?」

「それなら海に捨てた。必要ないからね」



すまし顔で言われて、ほっとしてしまう。


思った通りだ。

やっぱりこの人は信用できそうだな。


ケイは「自分のいいように利用して、要らなくなったったら捨てる。そういう人です」と言っていたが、本当だろうか。

僕は全くこの言葉が信用できない。

たとえそれが本当だとして、何になるのだろうか。

脱獄するために僕は利用されるのか?


まあ、それもいいと思っているけどね。

頼りにされているってことだから。



それに、僕はアルマを愛してしまった。

他の人の評価は信じられない。



胸をもっといじって欲しいし、たくさんキスしたいし。

S◯Xだっていつかはしたい……。


全力で守ってくれた彼が好きになってしまったのだ。

連続殺人鬼なのに。


僕は咄嗟に彼に抱きつき、軽いキスを唇に当てた。

薄い唇にぶつかり、赤い舌を出して僕の下唇を舐める。

ペチャペチャと濡れる音が響いた。


背中にぞくぞくと鳥肌が立ち、鼓動が高まっていく。

もっとキスしたい。


「……」


あれ?嫌だったのだろうか?


顔を上げると、無表情な彼は目線を逸らし棚に置いてある箱を眺めていた。


「ん?どうしたの?もしかしてキス嫌いだった?」


そう尋ねたが、やはり返事はなく次は上を見上げていた。

何を見ているのだろうか?

僕も見上げようとしたら、アルマの手が顔にかかり阻止してきた。

力が強すぎて、息ができない。


「上を見上げるなよ。段ボール箱が落下してきそうだから」


そう言われて阻止されたので、仕方なく下を見てその場から離れる。

しかし場所は棚と棚の間で変わらない。

二人して立ち上がり、見つめ合う。


「さて、ヘリに向かうか」

「うん」


アルマに惹かれて歩みを進めようとしたら、いきなり視界が横転。

鈍い痛みが頭に走ったものの何が起きたのか分からず、気を失ってしまった。

ただ最後に見えたのは、彼の微笑みだけ。